野球、サッカー、麻雀、ジャニヲタ…「あるある本」が拡大中

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更新日:2012/11/8

 野球が強い弱いに関係なく、高校の野球部ならではの独特の習慣やしきたりを“あるあるネタ”として集めた『野球部あるある』(菊地選手(『野球小僧』編集部):著、クロマツテツロウ:イラスト/白夜書房)。昨年9月の発売時にはアマゾンのスポーツ・アウトドア本のカテゴリーでしばらく上位にランクインするなど、結構な人気となった。そして今年4月には続編の『野球部あるある2』も発売されている。

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 この本が火付け役ともなり、その後さまざまな“あるある本”が次々と発売されている。『みんなのあるあるプロ野球』(カネシゲタカシ、野球大喜利/講談社)、『カープあるある』(クリエイティブ研究所/アスペクト)といった野球関係だけでなく、『吹奏楽部あるある』(吹奏楽部あるある研究会:編集、菊池直恵:イラスト/白夜書房)、『麻雀あるある』(グレート巨砲、木山道明/竹書房)、『ジャニヲタあるある』(みきーる:著、二平瑞樹:イラスト/アスペクト)、さらには『2時間ドラマあるある』(佐野正幸/宝島社)、『北海道あるある』(岡田 大/宝島社)など、いろんなジャンルに拡大しているのだ。その内容は、扱うネタが違うだけで、どれも『野球部あるある』にならって「あるあるネタ+おもしろイラスト」という組み合わせがメイン。サイズもどれも文庫と新書の中間的な大きさで、持ち歩いて気軽に開くことができるものとなっている。

 これらの“あるある本”に共通するのは、当事者やその筋のマニアが思わず共感するネタが数多く収められている点ではあるが、ネタの解説とコミカルなイラストがセットという気軽さが、幅広い購読層に響いたよう。少し聞きかじったことのある人にとっては貴重なネタ元として、また本来かかわりのない人にとっては、ある種の憧れや知らないもの見たさの心理で興味をひいたようだ。

 たとえば、「ボールを足で扱うと、びっくりするほど怒られる」(『野球部あるある2』)は、見出しとともに、ボール拾いで両手のふさがった球児が拾い切れないボールを蹴飛ばしている姿と、果てしなく遠く人影にしか見えないような距離から監督が「ちょっと来い!」と怒号を挙げているイラストが付いている。野球の世界では総じてボールを神様のように敬う傾向があり、足蹴にするなどもってのほか。人目のつかないところでほんのちょっと足で転がしただけでも監督に目ざとく見つけられ、普通の人が見たら「そこまで怒るか?」と思われるほど激しい説教を受ける。これは時代や地域を問わず、実際によくある光景だ。

 こうしたネタは、知る者にとってはまさに「あるある」であり、経験のない人にとっては「へぇ~、そういうものなのか」というトリビアとなる。特に女性読者にとっては、体育会系男子の独特な世界を垣間見れることが新鮮らしい。当事者には日常の空間、経験者には懐かしい空間、そして無関係だった人には異空間……。読み手によってさまざまな風景に変化するのが面白い。

 10月31日には『学校あるある』(学校あるある研究部/イースト・プレス)が、また11月8日には『サッカーあるある』(宝島編集部:編集/宝島社)や『ネコあるある』(永田久美子:監修、ナガタクミコ:編集/宝島社)が発売される予定で、まだまだその波が広がっていく模様。しばらくはブームが続きそうだ。

文=キビタキビオ