神様・仏様・サンタ様。祈る日本人こそ救われる?! 危機の時代のお陰様インテリジェンス術

小説・エッセイ

公開日:2012/12/29

人間の叡智

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:佐藤優 価格:842円

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神様・仏様・サンタ様…。なぜ私たちは、彼らにお祈りをするのでしょう?
ご縁・お天道様・お陰様…。なぜ私たちは、それらを実感できるのでしょう?
目に見えない存在を確信し感じる力。これこそ帝国主義化する世界の中で、あなたと日本が大国に飲みこまれない力。

世界のトップインテリジェンサー佐藤優さんは、お陰様の国に危機と希望を投げかけるのです。

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なぜあなたの給与はあがらないのか? あなたなら何と答えますか?

会社が搾取しているから? デフレだから? 日銀がお札を刷らないから? 少子高齢化社会だから? 内閣の危機突破力がないから?

いずれも本質ではありません!

世界の諜報機関・辣腕の外交専門家を相手に活躍するトップインテリジェンサー佐藤優さんは、劇場型政治TVショーで思考停止した日本人(私;)のインテリジェンスの浅薄さを問いただすのです。食うか食われるかの帝国主義的外交ゲーム。隙あらば相手を蹂躙しようとする大国間の思惑と緊張のパズル。無策な日本が引き寄せる構造的な停滞。

【危機の時代のインテリジェンサーの思考法】
 これこそ平和ぼけした日本人(私;)が学びたい主題です。

インテリジェンスは、(国家が)生き残るために必要な智慧。インテ(間に)+レゲーレ(組み立てる・読む)。つまり組み立てているものの間に何があるかが見える、もしくは、書いていないことが読める能力のことだそうです。

【目に見えないけれども確実に存在するものがあるという感覚(実念論)】こそが、イギリスの諜報機関をはじめとした、世界のインテリジェンス・エリートの要諦と、氏は説きます。

佐藤さんの背面世界の把促力や、生き残りのための物語の組み立て力こそ、お陰さまの国に生まれた日本人として学ぶべきなのです。

神様、仏様、サンタ様…にお祈りする日本(人)。
ご縁・お天道様・お陰様…を実感できる日本(人)。
KY(空気)や影響(影が響く)…に敏感な日本(人)。
間に合う・間違い・間合い…間柄が鍵の日本(人)。

こんなインテ(間に)+レゲーレ(組み立てる・読む)の国、“おかげ様の国・日本(人)”こそ、帝国主義化する大国と大国の間に横たわる“目に見えない内在的論理”を読み、世界を救える叡智がある。佐藤さんは、危機への警鐘とともに、そんな希望を伝えたかったはず、と勝手に行間を読んだのでした;。さてあなたは、本書から何を読み取りますか?


「新・帝国主義の時代においては、TPPはむしろ保護主義だからいい」。「中国の反日運動の背景には、ネーション・ビルディング(民族形成)とエリートの識字率向上がある」。世界最高峰の英国情報機関(陸軍学校)で学び、ソ連の解体(国家の無機能化)を目の当たりにし、その後、外務省で情報専門集団を率いた佐藤さんの視界には、TVショーでは語られない、大国間の背面世界の動きや内在的論理が、明晰に映し出されます

[intelligence] の藤井的解釈は、in(中に)とtell(告げる)=[何かを告げられようとされる力]とも読める。例えば「虫の知らせ」「風の便り」「根拠なき確信」は、けっして誰かに代行して貰えない非普遍的で超属人的なもの。漢字研究の巨知、白川静かさんが考える「お告げ」の「告」の左上の払いの部分は、神様(天)からの啓示を受け取るアンテナの意味だったとか。つまりインテリジェンサーは、情報を[読める]のではなく、情報に[告げられる]人なのだと思う

終章「いかに叡智に近づくか」の解として、他人の内在的論理を捉えるために、古典読書がすすめられる。バルトの『ロマ書』、ブーバーの『我と汝』、マルクスの『資本論』『聖書』、ヘーゲルの『精神現象学』、カントの『純粋理性批判』、『法華経』…。さらに氏は、読書人階級の重要性を説く。「読書人口は、どの国でも総人口の5%程度。学歴、職業、社会的地位に関係なく、共通の言語を持っているその人たちによって、世の中は変わってゆく」。ダ・ヴィンチの愛読家・愛本家には嬉しい話である