アナタの好きなソレ、本当に歴史ですか？

戦国武将に新選組、三国志。これらはゲームやマンガのおかげで、特に知られた歴史ジャンルでしょう。ここ数年でその作品数は一気に増加し、歴史にハマる女性を「歴女」と呼称するとかしないとか…。

しかし、本作はそこにあえて問います。歴史モノってそんなものなのか、と！ それ、ただのキャラ萌えじゃないのか、と！

本作は民俗・歴史学者の宗像教授の奇想と活躍を描いた濃厚骨太な歴史モノ。漫画と侮るなかれ、本作は2009年に大英博物館で展示されるほどのガチンコ作品であります。ある意味インディ・ジョーンズよりスゴイ！

拙著である『2001夜物語』や『ブルー・ホール』などでおなじみの、緻密な考証と美麗な画面は本作でも健在。どちらかというと歴史には明るい方ですが、モノの数ページでフィクションであるということを忘れてしまうほど、グイグイ引っ張られる説得力です。いつのまにか宗像教授と一緒にフィールドワークへやってきたかのような錯覚に陥り、なるほどな～！ と感心しっぱなし。

…というのも、仮説はしばしばぶっ飛んでますが、登場する史跡や伝承は実在のもの。出雲大社や伊勢といった名所や、桃太郎、七夕などの誰しもが知る昔話、伝承から切り込んでいくので、非常に身近なお話に感じるのがポイントなんですね。

素朴な疑問から仮説を立てて、見聞する。そして、古に思いを馳せる。歴史というジャンルは出生や沿革、名称といった類の集まりだと思いがちですが、そういうデータは歴史を嗜む“登山具”のようなものだったと気づかされます。

あっちへ行き、こっちへ行き、教授のロジックを追いかけて、古代からの歴史が自分に繋がってくるような感覚が非常にキモチイイ！ 読み終える頃にはすっかり史跡巡りをしたい気分にかられ、日本人なんだな～としみじみ感じたりもして…。並の教科書よりよっぽど優れた歴史書といってしまっても、言い過ぎではないかもしれませんね～！