【今夜スタート】 櫻井翔主演の春ドラ『家族ゲーム』の原作本は、ぬるい日常に一石を投じる衝撃作!

小説・エッセイ

更新日:2013/4/17

家族ゲーム

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 集英社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:本間洋平 価格:380円

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そろそろ2013年4月期、春スタートのドラマが出そろいましたね。嵐の櫻井翔くん主演のフジテレビ水曜夜10時『家族ゲーム』は、破天荒なイケメン家庭教師・吉本荒野(櫻井翔)が、落ちこぼれの中3男子とその家族をまるごと更正させるべく活躍する“濃いキャラドラマ”の呼び声高い話題作。ざっくりまとめるとそんな感じです。では、原作のほうを読んでみましょう。

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約30年前、一大センセーションを巻き起こしたこの作品は第5回すばる文学賞受賞作、テーマは当時加熱していた受験戦争。80年代の閉塞感とともに、正直あまり救いのない展開が家族と家庭教師の春夏秋冬に沿って淡々と綴られてゆきます。それはまるで、定点カメラが観測した記録のごとしです。

たとえば

「春」
出来の悪い次男に手を焼く沼田家に、有無を言わせぬ鉄拳家庭教師・吉本がやって来る。家族全員にとって一種の新しい風? が吹く(それにしても教師が生徒をちょいちょい殴りすぎる描写は、今読むと強烈)。

「夏」
相変わらずスパルタかつ、ドSでバイオレンスな家庭教師吉本、ニヤニヤ笑いの低姿勢で従順についてく次男は徐々にいいコンビに? 優秀な優等生のはずの兄がケンカ。何かが変わり始める予感あり?

「秋」
青空の残る秋の風景。家族の日常が相変わらず淡々と描かれる。次男の英語の成績は夏休み直前から着実に伸び、学校一の美女からラブレターも。しかしなぜか煮え切らない。「他人を蹴落としてエリートになる」、そんなハングリーな肉食男子をめざせと言われましても。

「冬」
風も冷たく感じる冬。それまでガンガンに攻めてきた吉本が、「失敗だったなあ、おれのやり方は」と、いきなりの敗北宣言。いったい何がどうしちゃったの…!?

無責任で横暴な父、息子たちときちんと向き合おうとしない母、内向的でナイーブな息子たち。学校へ行く、行かない、勉強する、しない。ただそれだけをめぐって家族の日常が展開するのですが、最後まで読んだとき、ハデな展開もカタルシスもないリアルな虚無感の中にポーン、と放り込まれて驚きます。ハッピーエンディング好みの私は、ちょっとモヤっとしました。がしかし、読む方によって、さまざまな余韻が楽しめるラストではないかと思われます。

これが果たしてドラマではどんな2013年版にリニューアルされるのか、楽しみにしつつ、淡々と文字を追いながら、原作の世界を味わってみてください。


ひと見開きに、吉本の「どうして、逃げた!」の3連発。つられて思わず「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」とつぶやいてしまいそう

「学校へ、行けえ!」「絶対に、許さねえぞ!」と、父親も怒鳴りまくりの威圧しまくりです

するとすっかり萎縮した次男は、思わずどもってしまうわけです。がんばれ

物語は長男・慎一の視点から描かれます。10代男子の「生」を感じさせる「血」にまつわる回想。英文でシメてるところもなんかそれらしい