井の頭線の終点から藤原世界を覗く そこに写る少女たちの姿とは?
更新日:2013/9/4
渋谷
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : 文藝春秋 |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:藤原新也 | 価格:486円 |
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2010年に映画にもなった写真家・藤原新也の1冊。被写体となる少女たちの、短い人生に何が起こっているのか。最小単位である家族という人間社会ですでにやっていけなくなってしまった少女たち。彼女たちに「愛」や「家族」について説教するのは簡単かもしれない。
でも、藤原氏は敢えて、ファインダーを覗くように、彼女たちにじっと耳を傾けて、聴くことしかしない。読書中伝わってくるのは、そんな氏のシャッターチャンスを狙う鼓動のようなもの。どこの、いつの、どんな言葉がきっかけになって、彼女たちを救い出せるのか。もしくは救いだせないのか。救い出す必要すらないのか。それに刻々と対面しているような緊迫感だ。
「おねがいわたしをさがして」という一文と、顔写真にマンガを貼付けただけの写真モデルへの応募用紙。渋谷の雑踏で少女が母親にぶちまける「死んでもいいやん」という叫び。朝の電車の中で、周囲と切り離されたような、服装の乱れも気にせず四肢を放り出して座る少女たち。
作家の文章はまるで、写真を見ているように写実的で、断片的で、そして細部の描写とそれをファインダー越しに覗いた氏の目を再体験させてくれるよう。そして写真で文章以上に語る。
70年代、多くの若者を『印度放浪』でアジアへ向かわせた彼ですが、井の頭線の終点にも、彼の世界はある。アーティストの大きな魂を感じずにはいられない1冊。
「おねがいわたしをさがして」と応募用紙の少女は言った
何気ない一言でずばりと少女の中の空虚感が伝わる
この少女を追うストーリーは迫力
アヤカには最後、泣かされました