21世紀の常識! グーグルもアマゾンもこれで勝負している

公開日:2013/9/13

ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:BookLive!
著者名:ビクター・マイヤー=ショーンベルガー 価格:1,566円

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一般社会でも話題になりつつある“ビッグデータ”。そもそもビッグデータとは何なのだろうか? 著者は“ビッグデータ”には厳格な定義はないという。個々のPCメモリに収まりきれなくなった巨大な情報データの複合体だが、単一のクラウドコンピュータのデータのことではない。ネット上に集積されつづけている、ありとあらゆるデータが、ビッグデータとなりうる。

 

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例えば今日あなたがアマゾンで化粧品を買って、その感想をツイートしたとしたら、アマゾンでの買い物とツイッターの感想がそれぞれビッグデータの一部となる。アマゾンはそれをほかの顧客への販促に使うだろうし、ツイッターはユーザー(この場合はあなた)の感想をほかの分析用データの一部として化粧品会社に売るかもしれない。

 

情報技術の進歩で、コンピュータの計算速度はどんどん速くなり、多量のデータ処理が短時間でできるようになった。統計のようにサンプルを抽出する必要がないので、生の巨大なデータを分析できるようになり、より精度の高い分析が可能になったためだ。サンプルを集める人間が、ある可能性を無視すれば、そのデータは最初から抽出されなくなってしまうので、サンプル抽出にはどうしても偏りが出る。よい例が、電話による世論調査で、固定電話で質問していたのでは、固定電話を持っていない層を頭から無視した結果しか出ない。逆に、生のデータの分析結果はこれまで見落とされてきた真実を導き出す。

ビジネス以外にもデータの用途は無限大にある。本書によれば、グーグルはワード検索のデータからインフルエンザの大流行を米保健衛生局より早く予想できたという。高速道路上のすべての自動車のGPS情報を処理すれば、渋滞予測も短時間でより正確にできる。ビッグデータの可能性は世界を変えるとまで言われているのだ。

しかし著者は、ビッグデータのマイナス面も指摘している。個人のプライバシーは現行の対策だけでは守りきれないことがもう判明している。政府は、SNSの交友関係やカードで購入した書籍の傾向から犯罪を未然に防ごうとするだろうが、それがやりすぎにならない保証はどこにもない。予測の利点と、予測だけで人間を判断することの恐怖が同時に論じられている。新しいビジネスについて知りたい人、ITに興味がある人はもちろん、電脳社会でどのように身を守って行くか考えたい人は早めに読んでおかれてはいかがだろうか。


コンピュータの計算速度の進歩を端的に示す例。ゲノム科学や天文学の分野で2000年代半ばに起こった情報爆発から”ビッグデータ”という言葉は生まれたという

「取組」? これは大量のデータにより相撲の八百長が推測されてしまった例。詳細は『ヤバい経済学』(東洋経済新報社)に

「犯罪を未然に防ぐ」ことが「犯行を思いついた人間を片端から逮捕する」ことになってしまう可能性が”ビッグデータ捜査”にはあるという