47都道府県の政治地図から日本のこれからを考える

公開日:2014/1/5

地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:八幡和郎 価格:823円

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「地方維新」「地方から日本を変える」といったスローガンをよく聞く。本書は、「日本の政治は47都道府県の政治風土や状況を知らずには語れない」と始まる(「はじめに」から)。47都道府県それぞれの政治地図、政治風土、県政性などから日本のこれからを考えてみる、これが本書のテーマだ。「地方維新」は実現されるのだろうか。

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「<47都道府県>政治地図」のサブタイトルがつけられているように、47都道府県すべての政治地図、政治風土、県政性、県民性などを、それぞれ記した部分が本書全体の約4分の3を占める(第2章~第7章)。自分の出身県なら関心はあっても、縁のない県の政治地図は‥。読み始めればこれは47都道府県から見た日本政治史であり、また政治家人国記でもある。それにいろいろなエピソード(たとえば現中国の恩人と呼ばれる日本の政治家の話など)もあって、読まず嫌いは損、なんでも読んでみるものだと実感させる中身だ。

それにしても知事には官僚出身者が多い。47都道府県の現職知事のうち30人が霞が関の官僚出身者(出身トップは総務省・前自治省の12人)。かつて80年代に「地方の時代」と呼ばれた時期があった。「地方云々」のスローガンがスローガン倒に終わったのは、土着権力の一つ、地方ボスらの人脈、腕力、財力や地方政治、政治風土などさまざまな旧弊のせいばかりではない。地元実力者からの利権温存の見返りと中央権力を後ろだてにした天下り知事自身が権力化、それが「地方の変化」を停滞させたのだ(変化よりも現状追認、維持こそ官僚主義と土着権力)。このような負の面の一方、「元官僚だからこそ官僚には騙されない」、中央をよく知る経験やネットワークを逆手にとり、独自ビジョンや目標をたて、地方の価値、独自性を高める政治を推進している知事たちもいる。本書には、そのような知事の例が積極的に取り上げられている。

「地方の時代」に始まって「地方から国を動かす」「脱中央集権」「地方分権」「地方から日本を変える」「地方維新」‥。何度、何年、似たようなことがいわれているのだろう。今度こそ実現されるのだろうか。その見通しは、この一冊を読んでから。流行り言葉はその言葉が人々の口に上らなくなったとき、その中身は定着したか、忘れ去られたか、そのどちらかであることが世の常。「地方維新」がスローガンだけで終わらないことを。

東京都知事が辞任した。本書には「歴代総理大臣の出身地マップ」や「現職知事一覧」などの表図がいくつか掲載されている。「スキャンダルによる知事辞任事例の一覧」もそのひとつ。辞任に追い込まれたあと、塀のなかに堕ちた知事もいる。元東京都知事はどうなのだろう。


目次から。第2章から第7章まで、47都道府県すべての政治地図、政治風土、県政性などが簡潔に記されている。ふるさと再認識!

「はじめに」から

なぜ「地方維新」は「明治維新」なのか(第1章から)

スキャンダルによって辞任した知事一覧(第3章から)
(C)八幡和郎/文藝春秋