個人サイト発表のヒューマンドラマwebコミックに現代のオトナたちが共感

　webコミックの隆盛時代です。webコミックサイトは、出版社、有志、個人によるものなど、じつにさまざまあります。電子書籍を読む読者なら、一度は閲覧したことがあるかもしれません。自分のコミックを出版するために、昔なら投稿して賞を獲るか持ち込みかの2択にほぼ限られていたのが、今ではサイトにアップされたwebコミックを編集者が読み、声を掛けるということもわりとあるようです。

　さて、本作『生きるススメ』も個人サイトで発表していたwebコミックが編集者の目に止まり、出版されたもの。作者の初作品集です。短篇集の中でも極短い1～数ページの作品ばかりなのは、もともとが気軽に読めるwebコミックという媒体の性質かもしれません。また、派手な見開きコマがないのも、基本的に単ページで読み進めるという同様の事情があるのでしょう。

　内容は、タイトルのとおり「生きるススメ」。文章作品では重い書かれ方になりそうなテーマですが、本作はサクッと読めるコミックであり、絵は平凡ながら親しみやすく、描かれ方が説教くさくなくあくまで静かに淡々としていることから、しぜんと「生きるって、やっぱりいいな」と思えるようになっています。読後に残るのは、一種の爽やかさ。不思議な感覚です。「生きること」は、気負いと多大な努力が伴うものではなく、生きにくい現実に対して少し角度を変えて軽く力を抜くだけで続けられるものですよ、と教えてくれるようです。

　下記サイトでいくつかの作品を読むことができますが、ぜひ、広く現代のオトナに購入し、手元に置いていただきたい1冊です。
【戸田誠二コミックサイト　COMPLEX POOL】