追悼! SM界の巨星・団鬼六が描く、情緒たっぷりなハードコア短編集

小説・エッセイ

更新日:2012/4/16

女学生

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 幻冬舎
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:団鬼六 価格:594円

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去る5月6日に食道癌で逝去された、団鬼六さんの遺作を読んでみた。
まずは故人に哀悼の意を表し、合掌…。(※以下敬称略)

団鬼六と言えば、宇能鴻一郎と並ぶ昭和官能小説の大家の一人。30代以上の健康な成年男子であれば、絶対にその名を一度は耳にしたことがある筈。得意分野はSM。その道では日本で…おそらく世界でも…最も高名な作家であった。

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この『女学生』は、タイトル作品を含む4編からなるSM短編集。
金に詰まった売れない映画監督が卑劣な手口で女子大生・大学生を売ってしまう話、「女学生」。男女の不良グループが、女教師とその教え子を陵辱する「赤い復讐」。売れない画家とその妻を奴隷として調教してしまう「蝋人形」。底辺校に赴任した美人教師が不良グループにいいように弄ばれる「赤い痴戯」…。時代設定はおそらく昭和20~30年代。タイトルだけ見ても、かなりそれっぽい。

実はSM小説に手を出すのは初めて。だいたい、これまでに体験した「官能小説」自体が幼き頃に親の目を盗んで読んだフランス書院文庫数冊くらいなのだから、この分野そのものが久し振り。どれだけエロく、どれだけグロいのか? と、ヘンな期待をしながら画面を操作したのだが…。

意外なことに、文体が思ったほど刺々しく無い。どころか、不思議な情緒・優しさすら感じる。扱っているのは紛れもなくハードなSMの世界であり、シチュエーションは当然のように迫力満点なのにもかかわらず、文章全体から来る印象は「甘美」「耽美」そして「倒錯」。セックスという行為そのものよりも、「辱める」「貶める」という部分が、張り詰めながらも甘く、そして細かく表現されているからに他ならないのだが、その手法の巧みさはもう芸術の域。ちょっとした文芸作品でも敵わないくらい美しい。もしかすると女性向きの小説なんじゃなかろうか? と勘ぐってしまうくらい。

僕自身も読破後に気付いたのだが、全4編中の3編には、挿入中の描写が殆ど出て来ない。官能小説にとっていちばん大事な部分が欠落している筈なのだが、それを補って余りある屈折した精神描写が凄すぎる。これだけで十二分に興奮出来てしまうのだから、ある種恐ろしい作品であることは間違いない。…自分が道を踏み外さないように気をつけねば(^^;)。

…しかし、SM小説って凄く電子書籍向き。表紙で内容を悟られることは無いし(カバー付ければいいんだけど^^;)、ちょっと画面を覗かれたとしても、文字の羅列であれば怪しまれることもないし♪

この手の小説の愛好者の皆さんには、正しく推奨環境。これはオススメです!


縦表示・縦組みモード。秀英横太明朝Mフォント、文字色白・背景黒。これがいちばんムーディなセッティング!

目が疲れたら通常の配色へチェンジした方が良いかも…

横表示・横組みモード。こういう今風のタイプが好きな人もいるな、きっと

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