日本復活のカギは「大阪」が握っている!

社会

公開日:2020/7/6

『大阪の逆襲(青春新書インテリジェンス)』(石川智久・多賀谷克彦・関西近未来研究会/青春出版社)

 首都機能の分散、コロナ対応などから存在感を増す大阪。大阪は、大阪人のカラッとした気質や文化などもあって、ネガティブな雰囲気が漂う日本の中で、比較的元気なイメージをもたれがちではないだろうか。コロナ禍で閉塞感漂う日本を元気づける材料を、大阪に探してみたい。

『大阪の逆襲(青春新書インテリジェンス)』(石川智久・多賀谷克彦・関西近未来研究会/青春出版社)を開いてみた。大阪はなにかと東京に対抗心をもつ、といわれることがあるが、本書の内容は攻撃的なものではない。日本全体がすでにやってきつつあるネガティブな要素に打ち勝つために、大阪が起爆剤になる材料を模索する、というポジティブな1冊だ。

 本書によると、大阪が日本の閉塞感を打破し得る要素はいくつもある。もっとも大きなチャンスは、2025年の大阪・関西万博だ。世界的祭典というと、まずオリンピック・パラリンピックを思い浮かべる人が多いと思う。確かに、オリンピック・パラリンピックは開催期間が1カ月程度、集客数は1000万人のビッグイベントだ。しかし、「地上最大のイベント」ともいわれる万博はそれを大きく超える。開催期間は6カ月、集客数は1970年の大阪万博で6000万人以上、2025年の大阪・関西万博でも2800万人の来場者を見込んでいる。大阪も新型コロナウイルスの影響を受けてはいるが、本書はそれを十分に乗り越えて余りあるポテンシャルを秘めていると力説している。

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 ところで、大阪・関西万博の会場は、大阪のベイエリアにある夢洲だ。関西以外の人には耳馴染みがないかもしれないが、この人工島は大阪市が2008年の五輪招致に乗り出したとき、選手村として想定されていた場所だ。現在は島の一部がコンテナヤードとして使われてはいるものの、用地の大半は塩漬けとなっており、税収も使用料も入らない“大阪市のお荷物”となっている。

 だから、負債を解決するために万博会場へ…という側面は確かにあるのかもしれない。しかし、夢洲でしかできないポジティブな理由がある。夢洲は、誰も住んでいない広大な空き地だ。制約が少なく、クレームが起きにくい。そのため、開催前からさまざまな企業や研究機関などが先端技術の実証実験をしたり、万博期間中にも実験的な展示を行ったりしやすいのだ。実際、大阪・関西万博のコンセプトは「未来社会の実験場」となっている。1970年の大阪万博で来場者を興奮させた「動く歩道」「電気自動車」「ワイヤレステレホン」に替わる未来技術が、私たちをきっと沸かせてくれる。また、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致先も同地だ。24時間眠らない未来社会の形が想像できそうだ。

 大阪人は「がめつい」といわれる。これは、良い意味で解釈すると、商売上手だということだ。実際、大阪は商人の町として長続きしている。近年、国際社会共通の目標として、持続可能な開発目標「SDGs」が注目されている。本書は、大阪人の「がめつい」リアリスト気質は、SDGsの先取りともいえる、と述べている。

 万博は国家プロジェクトだ。大阪・関西の目覚めが、日本全体の活性化に繋がることを願いたい。

文=ルートつつみ(@root223