描き込み魔、森薫の本気にうなる!

更新日:2014/3/27

乙嫁語り 1巻

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:森薫 価格:450円

※最新の価格はストアでご確認ください。

私が膝の上に乗ってきた猫にも気づかずに、一気に読んでしまった傑作です。作者の森薫さんは有名な描き込み魔。アニメ化した前作『エマ』でも、19世紀末イギリスの風俗描写や装飾への描き込みに並々ならぬこだわりを持ち、一躍有名になりました。今作でもそのこだわりが発揮されております。鮮やかに描写される、生き生きとした遊牧民の生活風習。一目で目を引く衣装や装飾への描き込み。中学から高校まで作者さんがはまった世界を描いているからか、その完成度は見事の一言しかありません。

advertisement

本作は19世紀の中央アジアの遊牧民の世界を舞台としており、よく出来た嫁のアミル(20)が心優しい少年カルルク(12)に嫁ぎ、ほのぼのと親交を深める話です。このストーリーに絡める形で遊牧民の生活が大変情緒豊かに、かつ細かく描かれており、気づけばページをめくる手が止まらなくなってしまいます。

先ほどもちらりと触れましたが、この作品で何より魅力的なのは、一目で作品への情熱の注ぎぶりが垣間見える描き込みの濃さ。
表紙を見ていただければ、装飾品と衣装の模様の細かさが分かると思います。遊牧民の間では、男性はいつ戦で死ぬか分からないので、財産管理は女性がするという傾向があるそうです。管理方法は、女性が全財産を「身につける」こと! そのためアミルは自然と装飾が多くなるのですが、全体を通してしっかりとその一つ一つが全て細かに描き込まれています。

そして私が一番唸らされたのが第二話の、柱の彫刻の話です。家の木材に細かな彫刻を掘り込んでいる老職人が出てくるのですが、この時の描き込みが一等すごい。擬音がなくても聞こえてくるようなノミと槌の動き、木屑は削った時の匂いさえ感じられそうでした。柱の彫刻が大きく映される決めシーンでは、削った跡の木目までもが描き込まれており、材木の手触りまで伝わってきそうです。作品の中でも特にこの話の描き込みは本当に細かく丁寧なので、ぜひとも電子書籍の拡大機能を十二分に活用して読んで欲しいです。


1話目1ページからすごい書き込み

じゅうたんへのこだわりは作者あとがきからも伝わります(笑)

思わずズームしたくなるこの線の多さ

これが全部手描きとは、脱帽です!