主人公の健気さに涙! 不幸な少女が自分そっくりな御曹司の影武者になることに

公開日:2012/11/15

王子様と灰色の日々 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:山中ヒコ 価格:540円

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多くの少女にとって王道である設定と、シンプルで丁寧な表紙に惹かれます。しかし私は作者であるBL作家・山中ヒコさんの大ファンなので、もちろんチェックはしていました。そして、あらすじを読んで唖然。なんだ、この少女達を釣る気満々の設定は、と。男装女子、他人との入れ替わり、金持ちなイケメン達…。暗くて重い内容を独特なシュールさで描く山中さんっぽくないなぁ。そう思っていたのですが、1話を読んで平謝り。ごめんなさい、不幸少女がキラキラした世界に放り込まれてイケメン達に翻弄されるパターンかな、とか一瞬でも考えた私がバカだった。やはりあなたは山中さんです。本作は、タイトルにある通り全体的に「灰色」のイメージのある、切なく美しいラブストーリーでした。

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王道の設定も周りのイケメン達も、きっと見所だと言われたらそうなのでしょう。しかし、私が見て欲しいのは敦子の健気さです。酒に溺れる父・貧乏・援助交際詐欺と、見事な不幸三拍子が揃った敦子は、全てを諦めて生きるためだけに生活しています。そんな時、ひょんなことから優しくしてくれた、至(いたる)の護衛・信也(のぶなり)に恋心を抱きます。失踪した至の影武者になれと、教育係の遼に命令されて了承したのは、至を見失ってしまった信也に責任が問われると言われたからです。

ちなみに特に泣けた健気さベスト3はこちら。
・至が帰って来た後の事などいとわず、筋トレをして足に筋肉を付けたり、声を低くするために煙草を吸ったりする。
・所詮身代わりだとは分かっているが、守られたり優しくされるのが嬉しくて至になりきろうと努力する。
・立派な屋敷の中で見た“闇”に、かつて「何不自由ない幸せな生活」と羨んだ自分を情けなく感じる。1番不幸なのは自分だとも気付かずに。

そんな敦子を見ている内に、(読者はモチロン)いけ好かなかった遼も好意を持つように…。そんな遼は、敦子が信也のために身体を張っていると知っているのです。しかし信也が好きなのは至という複雑な四角関係は正に灰色! ナチュラルにBLが混じっているのはご愛嬌です(笑)
「遼→敦子→信也→至」の図式が、今後どう変化していくのかがとても楽しみです!


出会い系カフェで釣れるオヤジで生計をたてる敦子

鏡の前に立つ敦子と至。「まるで双子のようにそっくりじゃないか…」

信也のために、命よりも大事な髪を切り落とし、失踪した王子様の影武者となることを決心する健気な敦子

1番グッと来た敦子の台詞。「“よくやった”とか“ありがとうございます”とか、なんてすてきな言葉だろう。ああ、私、なんでもできる気がする」

薄暗い部屋で敦子の独白。「この大きく明るい宮殿の中には 何不自由ない幸せな生活があるんだろうと思ってた」

次第に敦子に心惹かれていく遼の、なんとも言えない表情に萌えます!
(C)山中ヒコ/講談社