本の上の部分が物理的にふわふわしている? ノルウェーの「最も美しい本アワード」金賞を受賞した本の仕掛けとは【デザイナーの装丁惚れ】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2026/3/30

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年4月号からの転載です。

色と質感が響き合う一冊

 東京アートブックフェアの雑踏の中に、白いふわふわが見えた。思わず、中を見ても良いですか? と声をかける。

 うすい膜のような表紙をめくると、あらわれる緑・青の色紙。本の上にあるのは読めない言語列だったけど、感覚的に山と海をあらわしてることを感じる。ノルウェーのベルゲンという街をベースに活動する詩人と中国の上海を拠点とする詩人、全部で14人の詩がまとめられていた。

 装丁をてがけたのは、ノルウェーに住む中国人。なんといっても、天のふわふわと、全体の用紙選びに心を奪われた。詩を読んだとき、説明としてではなく言葉そのものに心が動かされるように、紙自体の手触りや質感にまず惹かれる。色紙がインデックス的な役割を持ち、本の構成は設計感があるが、その柔らかな質感によって、読み手にロジカルなイメージよりもポエティックな印象を強く感じさせるところが巧妙だ。

 こだわった本をつくることは、価格や工程で並大抵ならぬ努力が必須。デザイナーである前に、紙の本という文化が好きなひとりとして、良いと思った本はどんどん買って、ものづくりの灯火が消えないように、微力ながら寄与していきたいといつも思っている。

選・文:𦚰田あすか 写真:首藤幹夫

わきだ・あすか●1993年生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業後大学院を修了、その後コズフィッシュを経て独立。手掛けた書籍に『おいしくってありがとう 味な副音声の本』『ベル・ジャー』『雪のうた』など。

『FJELL HAV POESI/山海詩』

Tomas Espedal、徐芜城ほか:著 寧孟:訳
Kinakaal Forlag  €48 *オンラインで購入可能
装丁:潘延栄

<第10回に続く>

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