『麻薬常用者の日記〔新版〕』巻が進むごとにタイトル文字が崩れて判読困難になっていく…【第45回 ブックデザイナーの装丁惚れ】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2026/3/9

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年3月号からの転載です。

 アレイスター・クロウリーの『麻薬常用者の日記〔新版〕』は、コクトー、ボードレール、バロウズ、ウェルシュなどの麻薬文学とならぶ好著である。旧版はギーガーの絵とマーブルを用いた硬質で妖しい雰囲気だったが、新版では縦長判型の3分冊に。麻薬常用を表現すべく、様々な要素がとことん盛り込まれ、混沌とした様相に刷新された。

 現在は入手不可だが、応募特典の箱(モリスの絵に骸骨をコラージュした外装)に揃いで入ることが前提だと思われる。

 巻を重ねるごとに崩れるタイトルや白インキと特色の図案。模様のある用紙から僅かに透ける表紙の題箋……。

 この、端々から熱量を感じる本をみていると、ある装丁家の言葉を思い出した。曰く「装丁は、ぐわっとやって、ドンだ!」。さっぱり意味がわからず当時は随分モヤモヤしたと記憶している。あれは、装丁には繊細さと大胆さが必要だと言っていたのだろうか。それとも、細かいことはいいんだよと言っていたのだろうか。いや、どちらも違うのだろうか。言葉の真意は今もやっぱりわからない。

 しかし、あらためて本書を手にとると、さっぱりわからなかった「ぐわっとやって、ドン!」という言葉が妙によく馴染んでいる。

選・文:大倉真一郎
写真:首藤幹夫

おおくら・しんいちろう●ブックデザイナー。設計事務所、デザイン事務所勤務を経て独立。文芸書から学術書まで様々な書籍を手がける。

『麻薬常用者の日記〔新版〕』
『麻薬常用者の日記〔新版〕』(全Ⅲ巻)(アレイスター・クロウリー:著、植松靖夫:訳、滝本 誠:解説(Ⅲ)/国書刊行会)2376~2530円(税込)

装丁:小林 剛(UNA)

<第9回に続く>

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