西野亮廣×又吉直樹「自分の作品で世界が一変する可能性が残り続けている」。『プペル』『生きとるわ』『ゴミ人間』を通して語る“創作へのモチベーション”【対談】

文芸・カルチャー

公開日:2026/4/10

ダメな人はどこかに生息していてほしい

西野:『生きとるわ』もそうですが、又吉くんはダメ人間をよく書くじゃない?あれは何なんですか。好きなんですか?

又吉:好きだし、そういう人が周りにいたのもあるし。ダメな人、弱い人って、迷いまくるんだけど、迷うと間違うんです。間違ったら、また追い込まれて、もっと迷って、普段できるようなこともできなくなっていく。そこに人間らしさを見ているというか。

『生きとるわ』
『生きとるわ』(又吉 直樹 / 文藝春秋)

西野:小説のなかではダメ人間を愛せるけど、実社会でもそういう人が周りにいたときに「それも人だな、かわいいな」と思える?

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又吉:思えるけど、直接そういう人が近づいてきたら遠ざける。

西野:(笑)

又吉:自分の近くにはいてほしくないけど、どこかには生息していてほしい。好きは好きだし、そういう人の話を聞くのも魅力的だなとは思う。

西野:魅力的だわ。ガッポリ建設さんとか見ているとキュンキュンくるもの。落語の登場人物じゃん!ウソでしょう?って思う。

又吉:あれは魅力やんな。

西野:めちゃくちゃ魅力。

又吉:でも俺は、そこで「見落としたらいけないな」っていつも思うのが、ちゃんとしている人。ダメな人より、ちゃんとしている人はもっと偉いから。

 俺は、ダメなやつでも生きててほしいという思いを込めて『生きとるわ』というタイトルつけたんだけど、「こんなやつら、許してなるものか。死ね」って怒る人もいる。でも、それはすごく正しい視点で。「ダメなやつを許していきましょう」だけではいけないし、「ダメなことはダメなんだけど」という前提は崩したくないと思っている。

最新作が最高到達点

又吉:『生きとるわ』の横井や『火花』の神谷のことを「借金もあるし仕事もないし人生詰んでますよね」って言う人がいるんだけど、僕はこれぐらいだったら詰んでないと思って書いているんです。全然ここからひっくり返せると思うので。

西野:詰んでないよね。

又吉:そう。だから、そういう意味で芸人や文筆家は得だなと思います。ある日、自分がすごく面白いものを完成させたら世界が一変するかもしれないという可能性が残り続けているから。常に「これはすごく面白くなるかも」という予感を持ちながら書いていて。

西野:いや、めちゃくちゃ大きい。次の作品がとんでもないところに自分を連れてってくれるかもしれないと思えるからずっと頑張れるけれど、天井が決まっていたら、とても走れないです。

又吉:最初に書いた『火花』が恵まれた状況にあって「天井が決まっているのかな」って不安になるときがあるんです。それを乗り越えていきたい。乗り越えるというのは、もちろんセールスだけではなくて。自分の中での「えっ、これを書けたんや!」みたいなものを感じてみたいですね。

西野:そういう意味で、僕は、最新作である『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』が現時点での最高到達点であることは間違いないですね。

又吉:それは僕ももちろん、絶対にそうです。

取材・文=金沢俊吾、撮影=干川修

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