【税理士は名探偵!?】領収書や見積書に隠されたトリックを暴く! 会社の闇を紐解く新感覚のお仕事ミステリー【書評】

文芸・カルチャー

PR 更新日:2026/5/20

税理士 鮫島桐子
税理士 鮫島桐子(橘マコト/集英社オレンジ文庫)

税理士 鮫島桐子』(橘マコト/集英社オレンジ文庫)は、税理士が担当する会社のあらゆる不正を見抜く、お仕事ミステリー小説だ。

 180cm超の長身と鋭い眼光を持つ税理士・鮫島桐子は、水戸研磨工業の顧問税理士を務めている。鮫島の目は、あやしい書類を見逃さない。経費関連の書類を起点に、会社で渦巻く問題の真相を見抜いていく……。

税理士の視点から会社の謎を暴く新感覚ミステリー

 本作には、脱税や横領、詐欺といったビジネスに近しい問題の種が次々登場する。やましい取引を隠すためには、あたかもクリーンな取引であるかのように、書類をごまかす必要が生じる。ここに切り込むのが、顧問税理士・鮫島桐子だ。

「事件が起きてから、犯人につながる証拠を探す警察や探偵」というミステリーの型を、「事件が起きる前に、悪事につながる書類を見極める税理士」に置き換えた、極めて新鮮かつ面白い設定である。

 領収書、見積書、納品書。本書に登場するのは、ビジネスパーソンなら誰にとってもなじみのある書類ばかりである。それらを悪用すれば、こんな不正を働くことが可能なのか、と読み進めるうちに驚かされる。それは優れたトリックが隠されたミステリーと出会ったときの、心が躍る感覚と似ている。

 そして、その不正に気付くためには、法制度に対する幅広い知識と、顧問先への深い理解、ロジックのほころびを見抜く洞察力が必要だ。そのすべてを駆使し、問題をすぐさま解決に導く鮫島の活躍には、まさにプロの手腕が光る。

個性豊かな主人公の魅力が、専門職のリアルを面白く引き立てる

 主人公の鮫島桐子が魅力的な人物であることも、本作を面白くしている要素のひとつである。不正に手を染めようとする人々に対峙し、真相を解き明かしていく鮫島は、どんな局面でも冷静かつロジカルである。まるで名探偵の推理のような、切れ味抜群の解説が素晴らしい。

 そんな鮫島は甘いものが大好きで、事務所内では福利厚生として日々スイーツを楽しみ、休日は特大パフェを平らげてしまう。仕事ができることで一目置かれる完璧人間が、大の甘いもの好きというギャップがたまらない。

 作品を通じて税理士という職の奥深さも感じられて、働く人を描く物語としても読み応えがある。ビジネスというものは、利益を求めれば求めるほど、クリーンであり続けることが難しいのかもしれない。だからこそ外部の目が必要だ。顧問先として登場する水戸研磨工業の仕事の流れや書類のやりとりも細かに描かれており、知らない業界や職種への理解を深める観点でも楽しめた。

 お仕事小説が好きな方、ミステリーが好きな方、そして魅力的なキャラクターが活躍するエンターテインメント作品が好きな方、全員に対して同じ熱量で勧められる一冊だ。一見してわかりづらい専門職を軸に、これほど面白い物語が紡がれるということを、ぜひ多くの読者に体感してほしい。

文=宿木雪樹

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