「自分で自分の二次創作をしてしまいそうで怖かった」――プロットなしで紡がれた新作『ファイア・ドーム』。辻村深月がデビュー20年超で見つけた新しい挑戦【インタビュー後編】

文芸・カルチャー

公開日:2026/7/18

デビュー20年以上を経て、新しいものに挑戦できた喜び

辻村深月さん

――そして、息継ぎとおっしゃっていた子どもたちの視点があることで、過去と現在の事件を行き来するだけでなく、未来への希望も見えた、と感じました。彼らの生きる未来が健やかなものであってほしい、という願いが、もしかしたらこの社会をよりよくしていくのかもしれないと。

辻村 実際、「子どもたちの未来が明るいように祈ります」「読み終わったあとの世界で、未来が少しでも明るいものであるように」という感想をいただくことが今回、とても多いんです。読者のみなさんが、登場人物と一緒にちょっとだけ先の未来を見つめながら、祈りや願いみたいな気持ちを抱いてくださっていることに、私自身、心強さを感じています。

――ちなみに、ラストで解き明かされる真相も、書きながらたどりついたもので、決めていたわけではなかった……?

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辻村 決めていなかったです(笑)。25年前に誘拐事件のかたわらで起きた未解決事件が現在にも絡んでくるのですが、その未解決事件自体、当初は設定として考えていなかったものなんです。ただ、今作を熱望してくださった担当編集者が警察小説などもたくさん編集されてきた方だったので、「もう一つ、読者を引っ張る謎として事件があったほうがいい」とか「読者が(途中で)ホッとしてしまわないために、ここでもう少し展開を起こして、引きをつくったほうがいい」とか、ミステリーの作法をそのつど教えていただきながら書いていたんですよね。透真の書いた新聞記事も、連載時はただ概要を書いていただけだったのですが、「記事全文を書いてほしい」と言われて……。

――スパルタ!

辻村 無理だよ、って最初は思ったんですけど(笑)、監修してくださった新聞記者の方に、この場合はどれくらいの文字数になるのかとフォーマットを教えていただきながら、実際にデスクから紙面の依頼をもらった気持ちで書きました。その時期は本当にいつも以上に新聞記事を読み込んだし、おかげで事実を積み上げる書き方でも記者の思いが出せるんだということもよくわかり、発見もたくさんありました。

 デビューして20年以上もたつと、私らしい小説は何かと自分で認識する以上に、何が私らしいと思われているかもわかってしまい、期待に沿ったものを書こうとしてしまうところがあって。自分で自分の二次創作をしてしまいそうで怖かったけれど、こうして新しいものに挑戦できたのがとてもうれしいんです。やり遂げたという想いと、まだやれることがあるかもしれないという気持ちを抱かせてくれたこの小説を、今、書けてよかったと本当に思います。

辻村深月さん

取材・文=立花もも 写真=島本絵梨佳

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