居室での孤独死、街の混乱、地方から姿を消す銀行……少子高齢化の日本に待ち受ける恐ろしい未来

社会

2018/6/18

『未来の年表2(講談社現代新書)』(河合雅司/講談社)

 もはや耳なじみのある言葉となった少子高齢化問題。日本を揺るがす大問題なのだが、いかんせん実感のわかないイメージしにくい問題なので、政府は長年大きな政策を実施しなかった。国民の関心も依然として低い。

 しかし一向に景気が回復せず、若者たちは結婚しなくなり、コンビニや居酒屋で外国人労働者が増加し始め、真綿で首を絞めるようにじわじわと私たちの日常が変わりつつある。むしばまれていると言うべきかもしれない。日本の未来はヤバい。

 そのことを分かりやすく訴えたのが『未来の年表 —人口減少日本でこれから起きること』だ。ダ・ヴィンチニュースでも取り上げ、当時大きな反響があった。

 そこで満を持して刊行されたのが『未来の年表2(講談社現代新書)』(河合雅司/講談社)だ。第2弾となる本書は、前作の二番煎じどころか、その恐ろしい未来を私たちの身の回りに起こるレベルまで拡大して予想した「パワーアップ版」だ。

 その未来を、本書は見て一発で理解できる「カタログ形式」で紹介しており、私たちがこれからどう生きていくべきか考えさせられる無視できない予言が並んでいる。

■伴侶に先立たれると自宅が凶器になる

 これからの日本は、長寿化や生涯未婚の影響で一人暮らしの高齢者の激増が予想される。そのため懸念されるのが、「自宅での事故」の増加だ。

 内閣府が分析した「高齢社会白書(2017年度版)」によると、65歳以上が事故に遭った場所の中で最も多いのが「住宅」だ。その割合、なんと77.1%。なぜ安全な自宅で事故が起きてしまうのか。

 高齢者になると、体力や気力の低下で片付けできない人が多くなる。認知機能が低下すればますます片付けられなくなり、部屋に物が散乱した状態になる。運動機能や平衡感覚、体力そのものが弱った状態でそんな部屋を歩くと転倒してしまうのは自然なことだ。そのため高齢者の自宅の中で「居室」が最も事故の起きやすい場所になる。

 この他、毎年冬になると話題になる「ヒートショック」、階段を踏み外す「転落」など、高齢者の一人暮らしには危険が多い。寂しい家の中で誰にも届かない助けを呼びながら、次第に意識が薄れていく……。恐ろしい未来だ。少子高齢化は、私たちの人生の終わり方も変えてしまう。

■「高齢化した高齢者」の外出が街の混乱を招く

 これからの日本では、80代を中心とした「高齢化した高齢者」が買い物をしたり病院に通ったり、そんな様子を街で見かけることが多くなる。その結果、何が起こるだろう。

 まず交通機関が乱れる。今でも車内で高齢者を見かけるが、彼らは「高齢化していない高齢者」だ。まだテキパキ動けるし、人の流れに乗って歩行できる。しかし「高齢化した高齢者」は、階段は苦しいし人の流れに乗って歩けない。バスに乗るのも一苦労だ。そのため乗務員の手を煩わせることになり、ダイヤの乱れが頻発する。

 また、店先で「私は何を買おうとしているのかしら?」「お前の説明は全然分からん!」と店員の手を煩わせる高齢者も続出する。自治体の窓口やATMも、認知機能の低下した高齢者を先頭にした混雑が生まれる。

 高齢者の数のピークを迎えるのが2042年と言われており、その頃の日本の街角は別の意味で賑やかになっているかもしれない。

■地方衰退を加速させる地方銀行の衰退

 増え続けるシャッター商店街が象徴するように、日本の地方衰退が止まらない。これは大都市(特に東京)が労働人口を吸いあげる「一極集中」が生みだした弊害の1つだ。本書ではさらに別の弊害も取り上げている。地方銀行が衰退していくのだ。

 高齢者が増えるということは、最期を迎える人が多くなることを意味する。彼らの遺産を受け取る現50~60代は、東京圏への人口流入が活発な時代を生きた世代でもあるので、地方で亡くなった親の金融遺産を東京圏で相続することが予想される。

 そのため本書で掲載されているデータによると、2014年から20~25年間のうちに、約51兆円が東京圏へ流入するというのだ。特に中部・北陸地方から流入する金額は約10兆円。「遺産マネー」が地方から東京圏へ次々に流れていく。

 これだけの預金残高を失った地方銀行の体力は低下し、地元企業への貸し渋りが起き始める。結果、地方企業が衰退し、ますます地方が衰退する。東京をはじめとする大都市は、ヒトだけでなくカネも吸いあげ、地方の未来を奪っていたのだ。

■これからの時代は「1人で2つ以上の仕事をこなす」

 あまりに険しすぎる日本の未来。これからを生きる私たちには暗い明日しか待っていないのだろうか。本書では、一般人である私たちでも実践できる8つの解決策を示している。

 その1つが「1人で2つ以上の仕事をこなす」ことだ。「日本の将来推計人口」によると、2045年の20~64歳の人口は約5100万人と推計。2015年が約7100万人なので、30年間で約2000万人もの労働人口を失うことになる。

 こうなると日本社会は豊かさを維持できない。そのため特定の業種が機能しなくなる事態を防ぐ必要がある。その有効な手段が「1人で2つ以上の仕事をこなす」ことだ。

 この手段は働き口の少ない地方ですでに見られている現象でもある。朝は幼稚園のバスの運転手、昼は自治体から委託された仕事、夜は飲食店で店員、という具合で就職難に対するリスクヘッジにもなっている。

 本書を読むと、少子高齢化が招く恐ろしい未来を具体的にイメージできるようになる。それと同時に、自分の未来を守るためこれからどのように生きていけばいいか、選択肢を見つけ出せるようになる。私たちの首に巻かれた真綿は、まだ取り外せるはずだ。手遅れにならないうちに個人でもできる対策をしっかりやって、未来に備えたい。

文=いのうえゆきひろ