1人でいるときに大地震に見舞われたら…。72時間を生き抜くためのサバイバル術

暮らし

2018/6/19

『もしときサバイバル術Jr.』(片山誠:著、高橋未来:イラスト/太郎次郎社エディタス)

 あなたがもしまだ中学生で、1人で家にいる際に大地震に見舞われてしまったら…。両親は仕事で不在にしていて、電話は通じない。こんな時には学校が避難所になると聞いていたけれど、余震や二次災害が怖くて外に出られない。家には水の備蓄はあるものの、食料はない。情報も集めたいから学校に行きたい。が、しかし1.5リットルのペットボトルを何本も担いでの移動はしんどそう……。

 こんな時、どうするだろうか。両親の帰宅をひたすら待ち続けるか、それとも「とりあえず外に出てみよう」と考えるのか。ただいずれにしてもサバイバルの知識やスキルが身についていれば、「どうしよう」といった不安は軽減されるのではないか。

『もしときサバイバル術Jr.』(片山誠:著、高橋未来:イラスト/太郎次郎社エディタス)は、災害発生後に孤立したり動けなくなった際の生存率を分けると言われる72時間を生き抜くための、72時間サバイバル教育を携わる片山誠さんによる、サバイバル指南書だ。

 部屋に1人でいた「きみ」は大地震に見舞われ、そこから声を出して助けを呼びながら、なんとか避難所になっている学校に到着。火を熾したり水を確保したり、燃料用の薪を作ったりしながら避難所でも快適に過ごせるように、仲間と知恵と力を合わせていく。同書はこの「きみ」目線で災害をシミュレーションしながら、たとえば助けを呼ぶ時は「高音を出すために裏声を使う方が聞こえやすくなる」といったことや、テントを張る際に役立つロープの結び方など、8項目にわたるサバイバル術が詳しく紹介されている。空き缶でご飯を炊いたり、水がない時のために簡易ろ過装置を作ったりする方法など知っておいてソンはないものばかりだ。

 ただこの本は地震や台風などで被災した際に、即使えるノウハウを教えるのが目的ではない。

かんたんそうにみえても、やってみたらすごく難しかったということは、世の中にたくさんある。
だから、この本に書いてあることも、読んだだけでできると思わずに、必ず体験してほしい。
やってみて覚えたことは、なかなか忘れない。

 とあるようにイザという時のためではなく、平時に自分であれこれ試してあらかじめ身に着けておくことが目的なのだ。

 またこの本は、片山さんが東日本大震災直後にボランティア活動をしていた宮城県南三陸町で出会った、中学生の話がきっかけでできたプロジェクトを元に書かれている。つまり児童を対象にしたもので、片山さんが理事をつとめる「72時間サバイバル教育協会」の、サバイバル教育プログラムを知ってもらうための本である(同協会のサバイバルマスター認定プログラム講習を受けて検定に合格すると、「ジュニア・サバイバルマスター」や「サバイバルマスター」の資格を取得できるそうだ)。

 確かに子どもであってもサバイバル知識や技術を持っていると、本人も周囲も被災しても慌てることなく、安心して支援を待つことができるのは事実だ。しかしたくさんの人が詰めかける避難所は、実際のところ知恵もアイデアもない大人が「大人だから」という理由だけで仕切っていることも珍しくなく、そうなると子供は意見を出しにくい。

 そこで提案したいのは、タイトルに「Jr.」とあるものの、大人もこの本で学んで実践して、サバイバル術を身に着けておくことだ。

「被災者は家族のようなものだ」と避難所内のパーテーションに反対したり、女性の必需品である生理用品を「不謹慎」だと受け取り拒否したりするような無知蒙昧な大人に、避難所での主導権を渡してはならない。天災は誰にとっても避けることはできないが、避難所で起こる「人災」は、いくらでも避けることはできる。そのためには大人も子供も関係なく、サバイバル術を知り実践できる人たちがどの地域にもいて、主体的に動くことが必要不可欠なのだ。

 同書はサバイバル術はもちろんのこと、避難所で人災を起こさないためにも役立つ本と言えるだろう。

文=霧隠彩子