津田大介2011年を振り返る 「政治メディア作り」

スペシャルインタビュー

更新日:2013/8/9

未曾有の大震災に見舞われた2011年。
震災を機に、さまざまなモノの在り方が見直されたのは言うまでもない。
今年もツイッター、ニコ動、メルマガ、ラジオなどで情報を発信し続けた、
津田大介さんは2011年をどのように過ごし、何を考えていたのだろうか。
10のキーワードとともに、津田大介の2011年を振り返る。(全4回)


 

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僕への注目は、ソーシャルメディアブームと表裏一体。
こういう時期にこそ新しい展開を考えなくてはと思った

――津田さんにとって2011年はどんな年でしたか?

津田:まさに激動ですね。
2010年より少し前から話をはじめさせてください。

僕自身、物書きではありつつも、ラジオやニコニコ生放送、イベントなどへの出演の仕事が2009年の5月くらいからすごく増えました。ほとんど平日の夜は(出演の仕事で)予定が埋まっている感じです。それはすごく良いことなんですけれど、これだと新しい事がなかなかはじめられない、このままでは良くないと感じていたんですね。

自分の問題意識として、「政治サイトを作りたい」という思いがここ2、3年ずっとあったんです。いま、僕に注目が集まっているのも、ソーシャルメディアブームと表裏一体のところがあって、まあ一時的なものだろうなと思っています。こういう時期にこそ新しい展開を考えておかなくてはいけませんから。

昨年の9月くらいから、この思いがいよいよ強くなりました。
けれども真面目に考えはじめると、これは結構大変だな、と。

 

ある程度規模感が必要だし、そうなるとおカネももちろん必要になってくる。スタッフも雇わないといけない。2年連続でピュリツァー賞を得たアメリカの有名なオンラインメディアProPublica(プロパブリカ)の年間予算も5億~7億掛かっていると言われています。

僕自身も、ナタリーでメディア運営の経験もあり、少なくとも年間1億くらいは必要だということは分かっているんです。逆に言えばそのくらいの資金があれば、純粋に内容を突き詰めて、おもしろいメディアを作ってやっていくことができる。そこに人(読者・PV)が集まれってくれば、ビジネスモデルもいくらでも考えていくことができる。
きちんと面白いことを継続的にやっていけば、PVもついてくる、というのは経験則で分かっていました。

そこで、最初の資金をどうしようかなと思っていたんですね。
私のメルマガ(津田大介の「メディアの現場」)でも紹介しましたが、Huffington Post(ハフィントン・ポスト:オンラインニュースのアグリゲーションと論説ブログからなるオンラインメディア)が200億円で買収された、とか。TechCrunch(アメリカのITニュースサイト)がAOLにやはり買収されたというニュースも相次ぎました。「メディアはバイアウト(事業売却)してもおカネにならない」という常識が変わってきたわけです。米国ではオンラインメディアの価値が認められはじめている。日本でも価値になりますよ、と。

だったら、「津田大介が日本版ハフィントン・ポストっぽいものをやるので、投資してください」という物言いでおカネを集めようかな、と思っていたんです。いよいよ動きだそう、そんな矢先に起こったのが、3.11の大震災でした。その瞬間はただただびっくりするしかなかった……。