帰省気分が味わえる! 方言マンガ 後編・西日本編

マンガ

更新日:2012/12/28

 さて、前編では東日本編を紹介したが、こちらは西日本の地域が地元だというみなさんに向けて方言マンガを紹介していこう。

 関西圏の方言を使った作品は、それこそ数え切れないほどある。関西弁と聞いて誰もが思い浮かべるのは、主人公の2人がまるで漫才のような掛け合いを見せる『ラブ★コン』(中原アヤ/集英社)や『名探偵コナン』(青山剛昌/小学館)の服部平次と和葉のようなコテコテの大阪弁。しかし、新撰組をモチーフにして京都弁を使う『風光る』(渡辺多恵子/小学館)や滋賀県の近江弁を話す『ササメケ』(ゴツボリュウジ/角川書店)などもあり、同じ関西でもそれぞれニュアンスの違う方言を楽しむことができるのだ。

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 そして、鳥取出身のマンガ家はたくさんいるが、有名なのはもちろん『ゲゲゲの鬼太郎』(中央公論新社)でおなじみの水木しげる。なかでもオススメは、水木が幼い頃におばけや妖怪の話をしてもらい、大きな影響を受けたのんのんばあこと景山ふさというお手伝いさんとの思い出を綴った半自伝マンガ『のんのんばあとオレ』(講談社)だろう。また、『天然コケッコー』(くらもちふさこ/集英社)や『砂時計』(芦原妃名子/小学館)のように、島根県を舞台にドラマ、映画化された作品も。

 さらに、この作品を描くために作者である紡木たくがわざわざ山口に移り住んだというのが、山口を舞台に高校生たちが恋愛を繰り広げる『瞬きもせず』(集英社)。学生たちが「6時にむかえにきちゃるけーっ」「おーたのむけ」などと交わす何気ない日常会話にも、地元で過ごした学生時代を思い出させてくれるセリフが散りばめられている。

 『町でうわさの天狗の子』(小学館)や『雨無村役場産業課兼観光係』(小学館)は、作者である岩本ナオの地元・岡山が舞台。「いいかげんにしとかれよっ」と親や先生に怒られたことや、岡山市内にある「白十字」のワッフルなどを思い出して、懐かしくなる人も沢山いるだろう。

 「~じゃけぇ」の語尾でおなじみの広島では、『BLEACH』(久保帯人/集英社)の射場鉄左衛門や『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)の赤犬ことサカズキのように、サングラスをかけていたり強面に見えるキャラもいるが、『咲-Saki-』(小林 立/スクウェア・エニックス)に登場する染谷まこのように、普通の女子高生も。女子が繰り出す広島弁は、まさしくギャップ萌え必至。『溺れるナイフ』(ジョージ朝倉/講談社)にも、広島弁と架空の方言を混ぜた言葉が出てくるようだ。使う人によってずいぶんイメージが変わるのも、広島弁の特徴かもしれない。

 また『みどりのマキバオー』(つの丸/集英社)の続編である『たいようのマキバオー』(つの丸/集英社)で騎手をつとめる福留隼人や坂本龍馬をモデルに作られた『銀魂』(空知英秋/集英社)の坂本辰馬が喋るのは、高知の土佐弁。香川なら、『うどんの国の金色毛鞠』(篠丸のどか/新潮社)なんてマンガも。主人公のウェブデザイナー・俵宗太が、いなくなった子供を大声で探していたら「なんしょんな大っきょい声出して」と近所のおばあちゃんに叱られてしまう。香川の郷土料理である醤油豆も出てくるので、思わず実家の醤油豆が食べたくなってしまうかも?

 九州は、タイトルが長崎県五島列島の方言で「元気者」という意味の『ばらかもん』(ヨシノサツキ/スクウェア・エニックス)や、佐世保を舞台にして、ジャズ人気にも火を点けた『坂道のアポロン』(小玉ユキ/小学館)。同作は2012年秋にアニメも放送され、ヒロインである律ちゃんの佐世保弁に癒されたという人も多いだろう。

 『あたしンち』(けらえいこ/メディアファクトリー)のお母さんは大分出身で、佐賀には人に変身できる猫が登場する『ミル』(手原和憲/小学館)という作品が。鹿児島は『ドカベン』(水島新司/秋田書店)の主人公である山田太郎のライバル・雲竜大五郎という鹿児島弁を話すキャラが登場する。熊本も、『巨人の星』(川崎のぼる:著、梶原一騎:著/講談社)の左門豊作に加え『ピューと吹く! ジャガー』(うすた京介/集英社)、いきなり団子やデコポンといった特産品もたくさん出てくる『ケロロ軍曹』(吉崎観音/角川書店)など、古いものから新しいものまで多くの作品で方言が使われているのだ。

 また、福岡の方言は『クッキングパパ』(うえやまとち/講談社)や『バンビ~ノ!』(せきやてつじ/小学館)で使われるような一般的な博多弁だけでなく、『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子/講談社)ののだめがしゃべっていた大川弁や、『波打際のむろみさん』(名島啓二/講談社)に登場する人魚のリヴァイアさんは小倉の北九州弁など、マンガにおいてもバリエーションが豊富。しかし、その違いをきちんと理解して楽しめるのも地元民ならでは。
 最後に、沖縄の独特な方言は『THE IDOLM@STER』の我那覇響や『テニスの王子様』(許斐 剛/集英社)の比嘉中の生徒たちが巧みに操っており、「しみてぃーちゅんどー」など他県民からするとルビがなければ全く意味が分からないという言葉もたくさん出てくる。

 2回に分けてお届けした方言マンガシリーズ。故郷の恋しさも、そろそろ募ってきたのではないだろうか。帰省できない人はお正月に、帰省組のみなさんも飛行機や新幹線、電車のお供にぜひ読んでみてほしい。