Macファンの不安はつきない!?

更新日:2013/1/11

 MacユーザーのApple製品に対する愛は、すさまじいものがある。常にAppleの動向に気を配り、新製品が出たとなれば、我先にAppleストアに向かい、なかには自室に祭壇を設け、Macをすえて拝しているユーザーさえいるというのだから、常軌を逸したその愛情がみてとれるだろう。

advertisement

 しかし、愛情の影には不安あり。Windows、ひいてはMicrosoftの動向を気にし、Appleの新作予告が出るたびに、変な方向に突き抜けちゃってないか心配し、新製品になにか文字通り爆発しちゃうような重大な欠陥はないかと憂慮し、SamsungがiPhoneの出荷台数を抜いたと聞けばパニックに陥る……。そう、Macユーザーは、常に不安と戦っているのだ。

 そんなMacユーザーのもつさまざまな不安を代弁してくれているのが11月29日に発売された『Mac不安ちゃん』(みずしな孝之/マイナビ)だ。

 これは、Macユーザーなら必ずチェックしているといっても過言ではない雑誌『Mac Fan』(マイナビ)に連載中の作品。作者は、『いとしのムーコ』(講談社)や『いいでん!』(エンターブレイン)、『幕張サボテンキャンパス』(竹書房)などで知られ、自身も20年来のMacユーザーである、みずしな孝之である。

 Macが大好きな心優しい主人公・不安ちゃんの頭の中には、ファンだけど、ファンだからこそ、いつも不安と心配が渦巻いているという、まさにMacユーザーを体現したかのようなキャラ。

 Macへの愛は確かだけど、いつも不満をもらしてしまう「不満パパ」やAppleの現在や未来をつい悲観してしまう「うれいママ」、生粋のWindowsユーザーである「ビスタちゃん」といった家族や仲間に囲まれながら、今日も今日とて不安を募らせる不安ちゃん。その内容は子どもらしいものから、ヘビーなMacユーザー顔負けのものまでさまざま。

 たとえば、あるときは、新製品がヘンな柄だったらどーしよう? と心配する。というのも、Macは過去に花柄のiMacを出していたという痛い事実があるからだ。しかもその名前は、「フラワーパワー」や「ブルーダルメシアン」といった、妙に強そうな名前だったりするもんだから、今でも黒歴史として記憶しているMacユーザーも多いことだろう。

 またあるときは、Mac Proの形が変わらなさすぎて心配になったりもする不安ちゃん。たしかに、MacBookやiMacは進化し続けているのに対して、Mac Proのかたちは何年も変わらないまま。新製品の発表などがあるたびに、Mac Proのデザインが変わるか!? と毎回毎回期待してしまうユーザーも少なくないだろう。変わらないものは変わらないからこその良さがあるのだが、正直、置いていかれてる感も多少はある。Macユーザーの心理は複雑なのだ。

 世間を騒然とさせたiOS6のマップ。そのあまりのスッカスカさにも不安ちゃんは不安に思う。曰く「おうちの外に出てみたら…この地図のままで空虚な世界が広がっているとかー!!」。さすがに、いくらなんでも不安に思い過ぎではあるのだが、そこまでにさせてしまうほど、iOS6のマップは常軌を逸していたことがわかる。

 また、なつかしの『ビリーズブートキャンプ』をもじって不満パパがつくった「パパーズ・ブートキャンプ」の内容なんて、当時(2007年)のMacユーザーのあるあるネタが満載だ。たとえば「MacBookを買ったら次の日新機種が!」や「ショップにいってもソフトの棚が見つからない!」「CMのラーメンズ ファンから見てもいけすかない」など、古くからのMacユーザーなら共感できる部分も多いだろう。

 とくに、ジョブズに関することとなれば、不安ちゃんの不安は頂点に達する。すい臓ガンが発覚したときは、手術に成功したと聞いても不安を感じる。基調講演に出席した際のジョブズが、異常にやせているのをみて不安に陥る。Appleの新しい本社がわっかのようとあれば、UFOがジョブズを連れていく夢を連想して見てしまったり……。結局、その不安は的中してしまい、ジョブズは逝ってしまう。パニックになるかと思った不安ちゃん。しかし、冷静を保ち、天国のジョブズへ手紙を書く。その文面には「さよなら」ではなく、「ありがとう」の文字が。

 ジョブズがいないAppleなんて、不安は尽きないだろうに、それでも、ジョブズに「ありがとう」という言葉を届けようとする不安ちゃん。もう、涙なしでは見られないシーンである。

 そう、Macユーザーは、ジョブズに不満・不安の言葉よりも、まずはこんなに愛情をもてる製品を出してくれて、ありがとうと、感謝の言葉をのべたいのかもしれない。

 不安は愛情の裏返し。『Mac不安ちゃん』はMac、Apple製品への愛がギュッと詰まったMacユーザー必見の1冊なの