どこまで許せる? かわいい女の子の裏切り行為

マンガ

公開日:2013/2/6

 もしも友達や家族、恋人に裏切られたとしたら、どんなに好きでも、仲良しでも、やはりなかなか許せないもの。「かわいいから許す!」なんてよく言うが、いくらかわいくても限度があるだろう。

 しかし、2月1日に発売された『裏ギリ少女』(川崎 中:著、TEL‐O:イラスト/角川書店)には、とんでもない裏切り行為をしちゃうヒロイン・星空ゆずきが登場する。この少女は、“バーグ・ティーン”と呼ばれる特殊な体質の持ち主。1000人に1人ぐらいの割合で発生するこの体質は、だいたい10歳前後で発症して20歳になる頃には自然に消えてしまうことが多いことから「曖昧な十代(バーグ・ティーン)」と呼ばれる。しかし、人によってその症状は様々。そして、ゆずきの場合は触れた人の思いをことごとく裏切ってしまう裏切り体質を持っていたのだ。

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 「健やかであって欲しい」と願う母親に頭をなでられれば、気分が悪くなって風邪をこじらせるし、友達が「仲良くなりたい」と思って手をつないでくれても、彼女は不快に感じてしまい、結局その子と大喧嘩して絶交してしまう。さらに、クラスメイトがウサギを見に行こうと手を引き一緒にウサギ小屋へ向かうと、ウサギは消えてなくなっていた。彼女は「飛び跳ねるウサギと遊びたい」というクラスメイトの思いも裏切ってしまったのだ。

 これでは、もしもデートの約束をしても別れ際にハグやキス、指切りしただけでそのデートはできなくなってしまうだろうし、チームメイトとして試合に出ても、勝った喜びを抱き合って分かち合うこともできない。どんなに楽しい時間を共有しても、触れた瞬間に崩れ去ってしまう。思いが強ければ強いほど、絶望的な裏切りにあってしまうのだ。だから、彼女は自ら人と関わることを避け、常に後ろに手を組んで、人に触れられないように。触れてしまわないようにしていた。

 しかし、彼女に裏切られるのは何も悪いことばかりではない。交通事故にあったり、学校の屋上から落ちてしまったり。そんなとき、人は「死んだ」と思ってしまうはず。でも、彼女に触れるとその思いさえ裏切ってくれるのだ。もしいじめられていて「あいつなんか嫌いだ」と思っても、彼女に触れれば向こうがいじめてこなくなるかもしれない。諦めたり、投げやりになってしまった心でも、彼女なら裏切ってくれるのだ。そんな悲劇的な状況が、すべて良い方向に変わるとしたら、裏切られてみるのも悪くない。

 裏切りと聞くと嫌なイメージばかりが思い浮かぶが、相手を良い方向に導くための裏切りなら、それは必要なことなのかもしれない。裏切られたことで、見返してやろうとがんばったり、自分を見つめ直すきっかけになることもある、ということを本書は教えてくれる。

 もしもすべてが嫌になって、何もかも諦めたり、投げやりになってしまっている人がいたら、1度ゆずきに裏切られてみては?