『琴浦さん』もびっくり! 史上最もお下劣な超能力者とは?

マンガ

更新日:2013/3/21

 人の心が読めてしまう能力を持つ少女を描いた『琴浦さん』(えのきづ/マイクロマガジン社)が人気だ。『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)をはじめ、そういった超能力たちは、マンガ界にひしめいている。

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 2月28日に出版された『クルミくん NO FUTURE』(ノッツ/小学館)も、そんな超能力が登場するマンガのひとつ。でも、この作品、他とは違う特殊な設定が加えられている。それは……能力の発生条件が「射精」ということ。そう、『クルミくん NO FUTURE』の主人公、伊丹来未は「射精」をすることで、未来を予知できる能力者なのだ。

 おっと、ここで読むのを止めるのはまだ早い。たしかに、設定はがっつり下ネタであるし、作品にも、頻繁に下ネタは出てくる。しかし、それだけで見切るにはもったいないほどの魅力が、この作品にはあるのだ。

 田舎の大学で、穏やかな毎日を過ごしている青年、伊丹来未。しかし彼には重大な秘密があった。それは、あたまにおかしな双葉が生えていることと、射精すると未来予知ができること。脱走してきた研究施設の刺客から逃れるためなどの名目を盾にしたり、しなかったり、というより日課的なノリで、今日も来未は未来予知をする。そんな彼が憧れる少女、栗ちゃん。そして、彼を連れ去ろうとする集団とのドタバタな日々が描かれている。

 先にも述べたとおり、来未の未来予知の条件は「射精」。ただし、未来が視えるのは「射精」の触媒となった人物限定で、むずかしい書き方をしたが、要は「オカズ」にした人物の未来しか視えないという限定的なもの。なので、アイドルや有名人をオカズにしてしまうと、彼が望んでいないのに未来が視えてしまうのだ。しかもその未来が華やかなものならまだしも、キナ臭い会社の社長とお金目当てで結婚して、数年後に別れ、その後はどんどんやさぐれていくという凋落の未来ばかりが視えてしまうものだから、幻滅し、どんどん好きなアイドル、もといオカズが減っていくという結果になってしまう。意外と不憫である。なので、彼の日ごろのオカズは、憧れのヒロイン、栗ちゃん。純粋で純情な女の子で、人当たりの良い性格をしており、だれとでも仲良くなれる。未来にも気さくに話しかけてくれる、本当に良い子なのだが、それゆえか、未来は彼女で抜きまくる。きっと、同じ経験を持つ男子は多いであろう。そして未来は彼女を通して同じ授業のテストの問題や、自分を狙う集団の襲来を予知するのだ。

 だが、そんな日々も長くは続かない。なんと、栗ちゃんに、頭に生えている双葉がばれてしまうのである。そしてなし崩し的に、未来予知の能力があることも話す来未。もちろん、そうなれば、その条件も話さなければならない。そして、彼女をオカズにしていることも……。でも、栗ちゃんは、それを聞いても未来とは友人でいてくれるのだ。栗ちゃん、マジ天使である。

 ちなみに、作品では他の能力者も登場するのだが、そろいも揃って、へんてこな発動条件をかかえている。「時間停止」という、ある意味最強の能力をもつ由鞠の、能力発動条件は「おしっこ」。つまり、おしっこをしている間だけ時間を止めることが可能だ。不憫である。ほかにも、発汗することを条件に、自分の体温を限界以上に上げることができる能力者や、出血を条件に筋力を増大させる能力者が登場する。

 そんなへんてこ能力者たちの、ドタバタな日常がポップでキュートな絵柄で表現されている。お下劣な設定ながらも、その絵柄のせいで、なんだかかわいらしく見えてくるから不思議だ。

 もし、本屋でこの作品を見かけたのなら、ジャケ買いをする前に、以上の事をよく頭に入れておこう。そうしなければ、その絵と設定の落差で、世をはかなんでしまう可能性があるからだ。くれぐれも注意するように。友だちにもしっかり伝えておこう。