「ガイマン賞」を入り口に 海外マンガの奥深い世界に親しむ

マンガ

公開日:2014/1/14

 「ガイマン賞」をご存じだろうか? 海外マンガの略称で、日本では注目されにくい海外マンガ=ガイマンの魅力を伝えるために始まった試みだ。主にウェブなどを通して読者の投票を募り、今年翻訳されたガイマンのベストを決めるといったものだ。元々は海外マンガ好きの個人が始めたが、今年から、京都国際マンガミュージアム、米沢嘉博記念マンガ図書館、北九州市漫画ミュージアムの3館が主催となり、じわじわと盛り上がりを見せつつある。なかなか手に取りづらいガイマンだが、今年ベスト入りした作品は、日本人でも親しみやすいのでおすすめだ。

 例えば、2013年1位のフランスの作家による『塩素の味』。毎週水曜日にプールに通う青年が、泳ぎの上手な女性と出会う物語だが、水泳というモチーフが青年の心のゆらぎまでも表現しているようで、叙情的で美しい。日本の少女マンガの繊細さと通じるところもあるだろう。

advertisement

また、個人的におすすめなのが、3位のスウェーデンの作家による『ニートメタル』だ。主人公は、34歳ニートの自称・ハードロッカー(実態はただのヘビーメタルオタク)の男・オウブ。ヘビメタの薀蓄が盛り沢山な点も特徴だが、理想と現実がともなわないオウブの情けない姿は、『俺はまだ本気出してないだけ』や『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』など、ここ数年、日本で人気を集める自虐的な主人公たちと通じるものがある。海外にもそんなマンガがあったのかと驚くとともに爆笑した。いやはや海外マンガは思った以上に奥が深い。

文=倉持佳代子/ダ・ヴィンチ2月号「出版ニュースクリップ」