昭和30年代の大ヒット作品『ロボット三等兵』シリーズが電子書籍となって蘇る

マンガ

公開日:2015/6/11

  • ロボット三等兵

    (C)前谷久光

 時代は第二次世界大戦終戦の1955年。当時の出版関連では、『週刊新潮』『サンケイスポーツ』創刊、少女マンガ雑誌『りぼん』創刊、『広辞苑』の初版が発行された時代だ。日本シリーズは巨人が南海に4勝3敗で勝利し日本一、アメリカではディズニーランドが開園した。

 物価上昇の影響などから、手塚治虫『新宝島』の大ベストセラーにより流行した赤本マンガブームが終焉し、貸本マンガへと主流が変わることになった時代でもある。1955年に貸本マンガとして刊行されたのが、前谷惟光(まえたに これみつ)の『ロボット三等兵』だ。

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 著者の前谷惟光は第二次大戦で中国等を転戦し、復員後に挿絵画家からマンガ家に転身。『トッピ博士』や『火星の八ちゃん』を発表した後、1955年に貸本マンガとして『ロボット三等兵』を発表した。

 主人公である“ロボット三等兵”は、同時期に登場した“鉄腕アトム”などとはまるで異なり、ブリキ人形のようなオンボロのロボット。喜劇王・チャップリンを彷彿とさせるドタバタ劇でありつつも、著者が体験した苛烈な戦争体験を元に、皮肉や世相をコミカルな笑いへと昇華した良作である。

  • ロボット三等兵

    (C)前谷久光

 『少年クラブ』(講談社)等でも連載され、昭和30年代に大ヒットを記録。余談になるが、愛嬌のあるキャラクターや、常套句である「いやなことをいうね」「へんなやつだね」「すごいのが出たね」などをオマージュとして描くマンガ家は今でも少なくない。

 60年の時を経て、2015年6月10日(水)「ロボットの日(=6月10日)」にちなみ、電子書籍販売サイト「eBookJapan」がロボットマンガ特集を開始することとなり、名作『ロボット三等兵』が電子書籍で蘇った。なお、今回の『ロボット三等兵』と同時に、前谷氏の数多くの作品が電子書籍でリリースとなる。こちらも合わせてチェックしておきたいところだ。
⇒eBook「ロボット漫画特集」

  • ロボット三等兵

    (C)前谷久光

前谷惟光(まえたに これみつ)プロフィール
1917年、東京都出身。東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)中退後、日本画家の尾竹国観に師事。1939年召集、中国、ビルマ戦線を転戦。復員後『火星の八ちゃん』『トッピ博士』を発表。『ロボット三等兵』は貸本からスタートし、『少年クラブ』をはじめ様々な雑誌で連載されるロングヒットとなった。その他、落語や童話の漫画化作品、多数。1974年、没。

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