悪の大ボス、ダース・ヴェイダーの子育て本が人気! もし本当に彼が子育てをしていたら…

映画

更新日:2015/11/27


『ダース・ヴェイダーと仲間たち』(ジェフリー・ブラウン:著、富永晶子:訳/辰巳出版)

10年ぶりとなる最新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の公開を間近に控え、大いに盛り上がりを見せている「スター・ウォーズ」シリーズ。「遠い昔、遥か彼方の銀河系で…」で始まる壮大なストーリー、その時代ごとの技術を駆使した最新鋭の映像など魅力もりもりのシリーズだが、何と言っても血の通ったキャラクター勢こそ最大の人気の秘密。そこで今回は、映画とは違った角度からキャラクターの表情を楽しめる、ユーモアたっぷりの絵本『ダース・ヴェイダーと仲間たち』(ジェフリー・ブラウン:著、富永晶子:訳/辰巳出版)をご紹介したい。

 本作は、泣く子も黙る暗黒卿ダース・ヴェイダーが「もしも子育てをしていたら」という“もしも”の世界を描く絵本シリーズの第4弾。いかついマスクと黒マントに身を包んだダース・ヴェイダーが、双子の兄妹・ルークとレイアの子育てに大奮闘。やんちゃな子どもたちに振り回されながらも、精一杯の愛情を注ぐダース・ヴェイダーのイクメンぶりが微笑ましく、好評を博しているシリーズだ。「仲間たち」とついた第4弾では、ダース・ヴェイダーとルーク&レイアを取り巻く愉快な仲間がこぞって登場。ハン・ソロやチューバッカ、R2-D2にC-3POなど友だちをぞろぞろと連れてきたルーク&レイアに、「みんなも宇宙船に乗せて」とせがまれるダース・ヴェイダー。ハロウィンの日、ジャバ・ザ・ハットの住処にお菓子をもらいに行くルーク。ルークに「1万クレジット貸して」と頼む、少年時代からならず者のハン・ソロなどなど、ハチャメチャでキュートなエピソードが満載だ。

 『スター・ウォーズ』愛好者の作者ジェフリー・ブラウンによって紡がれる世界は、「もしこのキャラとこのキャラが、こんなことをしていたら」という遊び心にあふれ、『スター・ウォーズ』ファンならばニヤリとしてしまうこと請け合い。コアなネタも豊富で、ファン心理をたっぷりとくすぐられることだろう。手触り感のあるイラストも可愛らしく、ページをめくるのが楽しくなるほどだ。

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 この絵本シリーズが人々の心を鷲掴みにした理由は、主人公をダース・ヴェイダーにしたこと。そして、「もしもダース・ヴェイダーがきちんと子育てできていたら」という設定を作り上げたことに他ならない。悪の大ボスながら、ダース・ヴェイダーほど愛されている悪役はいないのだ。

 映画を振り返ってみれば、ダース・ヴェイダーことアナキン・スカイウォーカーは勇敢で愛らしい少年だった。そして運命の女性パドメ・アミダラと輝くような恋に落ちた。しかし、不器用でクソ真面目な彼は、アミダラを深く愛しすぎた結果、ダークサイドに落ちる。クソ真面目ゆえに、誤った道へとはまり込んだ彼は、アミダラとの愛の結晶であるルーク&レイアの成長を見届けることもできなかったのだ。

 愛と希望に満ちたジェダイとしての未来。一方で湧き上がる恐れや疑い、震えるほどの怒り。ダース・ヴェイダーの辿るドラマチックで悲劇的な運命は、人々を惹きつけてやまない。そんな彼の、「もしもきちんと子育てをできていたら」という世界は、ダース・ヴェイダーが見たかった、そして私たちが見たかった情景だ。もし本当に彼が子育てをしていたら、きっと絵本のストーリーのように必死に子育てに奔走していたに違いないのだから…。ああ、そう考えたら涙腺すら刺激されてきた! ぜひ最新作の公開前に、優しく温かな“もしも”の世界を楽しんでいただきたい。

文=成田おり枝