キラキラなんかしていない!? 孤独で寂しい、悲惨で不憫、OLライフに、男性諸君の夢崩壊

マンガ

公開日:2016/1/3


『ひとり暮らしのOLを描きました』(黒川依/徳間書店)

 “ひとり暮らしのOL”と聞くと、なんだかゆるふわっぽいイメージを抱いてしまう男性諸君は少なくないだろう。平日は朝からお弁当作り、帰宅後はネイルやボディケアに精を出す、休日は友人たちとランチに出かけ、趣味はヨガにインテリアショップめぐりにアロマテラピー…。まさに絵に描いたような、キラキラOLライフだ。

 そのように甘い幻想を抱きがちな“OLのひとり暮らし”の現実を描いているのが、『ひとり暮らしのOLを描きました』(黒川依/徳間書店)。ただし、本作で描かれているのは、前述したリア充的OLライフではない。それとは正反対の、孤独で寂しくて悲惨すぎる、とあるOLの生態である。

 本作に登場するのは、名も無きひとりのOL(と、ぬいぐるみのカエル)。作中にはフキダシやセリフもなく、まるで無声映画のように淡々とした彼女の生活ぶりが描かれる。読者はそれを覗き見るのだが、あまりにも彼女が不憫すぎて、思わずページを閉じてしまいたくなる人もいるかもしれない。

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 会社に行くために泣きながら朝ごはんを食べているシーンや、なにもすることがなくて日光でライトアップされたホコリを眺めているシーン、勇気を出して出席した同窓会でぼっちになってしまうシーンなど、登場するのは、いずれも不憫すぎるシチュエーションばかり。彼女にいったいどんな事情があるのかは明確に言及されないが、「会社に行くことが極端に嫌い」「休日に遊べる友人がいない」「アクティブな趣味が一切ない」といった、非リア充的な要素は読み取れる。ただひたすら、毎日を耐え忍ぶ姿は、可哀想で可哀想で、涙がこぼれてきそうなほどだ…。

 けれど、これはあながち遠い世界の話ではないようにも思う。仕事が嫌で嫌で仕方なくて、日曜日の夜に憂鬱な気分になって涙が出てきたことはない? せっかくの休日なのに、なんの予定もなくて遊んでくれる友人もいなくて、ただひたすら部屋でぼんやりホコリを眺めた経験は? そんなのないよ!なんて言える人には、まったく無関係なショートコメディとして本作を読むことをオススメしよう。でも、ちょっと心当たりあるかも…なんて人は、本作を読めば、不憫すぎる彼女に共感できる部分が多々あるはずだ。そして、悲惨な彼女の日々から、「自分はここまでツライ状況じゃない!」と勇気がもらえるかもしれない…!

 本作はもともと、著者の黒川氏がTwitterで1コママンガとして発表していたもの。その内容が大反響を呼び、黒川氏のフォロワー数は300人から2万5000人へと膨れ上がったという。みんな、不憫なOLに感情移入しているのだ。

 そう考えると、人は誰もが孤独なのかもしれない。それをごまかすためにリア充的に振る舞うのか、あるいは彼女のように悲惨な日々を耐え忍ぶのか。ただ、それだけの違いなのだ。本作を読めばきっと、ひとりの夜に「自分は世界一不幸だ」などと悲しくなることはなくなるだろう。だって、もっと不憫なOLがそこにいるのだから。

文=前田レゴ