『黒魔術で困っている客からの電話』『大好きな人に対して「栗おこし」を投げつけてフラれた』奇天烈エピソード満載!原田ちあきの挙動不審日記

マンガ

公開日:2016/5/12


『原田ちあきの挙動不審日記』(原田ちあき/祥伝社)

 本当は言いたいことがあるのに口にできない。誰もが抱える、そんなモヤモヤした感情をあけっぴろげに表現し、ネット上で話題を集めているイラストレーターがいる。原田ちあきさん。彼女は自身を「よいこのための悪口メーカー」と称し、生きづらい現代を浄化すべく、人々の鬱屈とした思いを掬いあげてくれている。

 そんな彼女が、このたびコミックエッセイ『原田ちあきの挙動不審日記』(原田ちあき/祥伝社)を上梓した。本作は「つぶやきGANMA!」にて連載されている作品で、他に類を見ない程の独特な世界観が持ち味だ。

 まずはなにより、そのシュールなストーリー展開がおもしろい。自身の体験や友人とのエピソードを元にしているのだが、いずれも予測不可能なものばかり。コントのようなものもあれば、常識の範疇をゆうに飛び越えていくものもある。テレフォンオペーレーターとして働いていた時にかかってきた、「黒魔術で困っている客」からの電話、大好きな人に対して「栗おこし」を投げつけてフラれたこと、出会ったその日に土下座して彼氏を掴まえた喪女仲間……。原田さんの周りには、こうも奇天烈なエピソードが集まってくるのだ。

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 また、キャラクターの造形もかなりエキセントリック。基本的に人のカタチを成しているのは主人公のみで、他のキャラクターはみな、宇宙人のような姿で描かれている。頭から足が生えている姿はまだマシな方。なかには頭だけだったり、スライムのようなアメーバ状だったり、もはやワケのわからないカタチで描かれる登場人物も存在する。おそらく、最初の数ページは面食らってしまうだろう。けれど、読み進めていくうちに、そんなことは気にならなくなる。原田マジックと言うべきか、彼女の世界観に呑まれ、自然とそれを受け入れどっぷりとハマってしまうのだ。

 さらに、目がチカチカするような色使いも特徴のひとつ。どのページも、イラスト文法など無視したカラーリングが施されていて、時にそれは「毒々しい」という表現がしっくりくるような配色だったりもする。けれど、繰り返しになるが、それがなぜか気にならなくなるというか、むしろ中毒性すらもって読み手に迫ってくるから不思議で仕方ない。

 本作のなかには、彼女の作風の原点とも言えるエピソードも収録されている。それは小学生の頃のこと。図工の時間に好きな絵を描くことになった原田さんは、画用紙を全面真っ赤に塗りつぶし、それを夕日に見立ててポエムを添えて提出したという。それを見た先生は彼女の行く末を案じ、親を呼び出したそう……。幼少の頃から彼女の世界観は確立されていたのである。

 マンガの常識をことごとくぶっ壊すような作家・原田ちあきさん。シュールでエキセントリックでクレイジーなその世界に、一度足を踏み入れてしまったら、もう抜けだすことはできなくなるかもしれない……!

文=五十嵐 大

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