えっ、それだけ!? 魚屋さんが教える、簡単に絶品魚料理が楽しめる方法

食・料理

公開日:2016/6/3


『恵比寿「魚キヨ」が教える 本当にうまい魚の食べ方』(魚キヨ/講談社)

 我が家はほぼ毎朝、魚を食べる。しかしそのラインナップを見てみると、平日は焼き魚か煮魚。休日に刺身が時たま顔を出し、気まぐれでマリネが登場する。焼いた魚や煮魚が特別に好きというわけではなく何を作っていいのかわからないのだ。レシピ本に載っている魚料理は手慣れていなければ難しいものだったり、そんなものうちにはございませんという食材と一緒に作られていたりする。毎朝じっくりとレシピの説明を読む時間なんてないし、つい単調なメニューでおさまってしまうのだ。

 そんな、魚メニューに苦しんでいる人への朗報とも言える料理本が、『恵比寿「魚キヨ」が教える 本当にうまい魚の食べ方』 (魚キヨ/講談社)だ。高校の家庭科を最後に料理というジャンルに真っ向から向き合う機会をすっかり失ってしまっていた私に、気軽にわかりやすく魚のことを教えてくれたこの本は、東京・恵比寿の駅前で三代続く魚屋「魚キヨ」を営む三姉弟が、肩透かしをくらうような簡単な魚料理と魚の扱い方について教えてくれている。

 高級料理店で計算されつくして作られた料理より、豪快に作られた漁師料理の方が美味しいと感じることがあるというのは、漁師料理が味付けや盛り付けなどのような後付けに力を入れているのではなく、新鮮さや本来持つ魚の素材そのものの魅力を一番に注視して活かし料理しているからなのではと考えると、この本の魅力はまさに漁師料理そのもの。難しいウンチクや細かな計算なしに、わかりやすく説明された魚の特徴から、それを活かした料理ができるようになる。まさに日常使いにぴったりのレシピ本なのである。

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 何はともあれ一番の魅力は、「こうやって食べてみな!」と簡潔に魚料理の楽しみ方を教えてくれるわかりやすさ。料理歴10年以上の私も今さらではありますが、ほほーっと感心してしまう1冊なのだ。そしてもうひとつの魅力が作り方を1から順に目で追わなくてもいいこと。詳細に1から10まで長々と作り方を解説したレシピ本は料理中、本と手元の目の往復に忙しくなる。そして、つい本に頼りすぎてしまい料理の成長に伸びしろがなくなるのだ。いや、こんな時代なのでいつでもどこでもレシピをささっと検索して見ながら料理をすることも悪くはないのだが、下手の横好きで料理が嫌いではないゆえに、いつか料理通ぶって、ちゃちゃちゃーと作ってみたいと密かに夢見ている私のような人にはぜひ一読していただきたい。

 紹介されているレシピは、だいたい2つか3つの工程で終わる。一度見て覚えられないほどいくつもの工程をたどらなければいけない難解なものはない。たとえば、超初心者向けにホタテ料理をご紹介しよう。簡単にとは言っても買ってきたホタテをそのままお皿に載せて出すのでは芸がない。そこで生のホタテに海苔を一巻き、わさび醤油を添えて、はいでき上がり。ホタテの甘みと海苔の風味の何たる絶妙さよ。甘エビが手に入ったらお刺身にするという人も少なくないかもしれない。しかし意外な絶品料理が甘エビの天ぷらなのだ。作り方は甘エビに衣を付けて揚げるだけ。ポイントは3尾くらいでひとまとめに揚げることのみ。揚げ物を作ったことがある人なら誰でもできる簡単レシピだ。ちょっと知ったかぶりしたいなら、ねぎとろ団子のお吸い物はいかがだろうか。生のままお刺身や丼にして食べることが多いねぎとろを、一口大の団子にして沸騰しているだし汁にポトンと落とす。脂が多いのでパサつくことなく、つなぎがなくても丸まってくれるとても便利な団子となる。あとは塩と醤油と刻みネギを汁にお好みで入れるだけ。

 ほかにもたとえば殻付き牡蠣料理。殻がついているだけでちょっと手が遠のくのは私だけか。お皿に並べた牡蠣に酒をちょちょっとふりかけて500Wで1個につき2分、 電子レンジにかける。この時点でお酒とレンジで2つの工程。あと1つの工程を行うとまさかの絶品洋風料理ができ上がる。またこの本では、こうすると美味しく食べられるなんていうちょっとしたコツも教えてくれている。たとえばサバの塩焼き。脂ののった塩気のきいたサバをグリルに入れて焼き、食べるときに、あるものを用意する。すると、これまたいつもとは違ったサバの塩焼きの美味しい楽しみ方ができるのだ。

 最後の一工程とは何なのか。あるものとは何なのか。この続きはWEBで…ならぬ、ぜひ本で。実際に手にとって作ってみてください。

文=Chika Samon