石原さとみ主演のドラマ『地味にスゴイ!』、原作『校閲ガール』最新刊では、悦子がついに編集部に異動。意中の彼とも衝撃展開!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

『校閲ガール トルネード』(宮木あや子/KADOKAWA)

 石原さとみ主演で話題を呼んでいる日本テレビ系ドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』。初回の平均視聴率が12.9%(関東地区)、19日に放送された第3回も12.8%とドラマ不況が叫ばれる昨今において、快進撃を続ける注目作だ。

 話題の理由はいくつかあるが、ひとつに「こんなの本当の校閲じゃない!」というものがある。石原さとみ演じる主人公・河野悦子があまりにリアリティがないという声だ。だが果たしてそうだろうか。
そもそもリアリティってなんぞや? 現実にあるがまま描いたらそれはドラマだろうか? 本作のリアリティは「悦子がファッショナブルすぎる」とか「現地にまで赴く校閲者などいない」というところにはない。「なりたい自分となれる自分の違いにもがき苦しみながらも、自分にできることを全身全霊で尽くす女性の奮闘する姿」にあるのではないだろうか。

 そしてそれこそが、原作小説『校閲ガール』でも書かれていたことである。プロならば、働き人なら自分の責任を果たすべし。やりたい仕事とやれる仕事が違ったとしても、与えられたものに全力投球していればいつか道は拓けるかもしれないのだからと。望む形ではないかもしれないけれど、きっと自分に必要な形で。

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 最新刊『校閲ガール トルネード』(宮木あや子/KADOKAWA)では、悦子が念願かなって女性誌の編集部に異動する様子が描かれる。だがそこに待ち受けていたのは、「できない」ことだらけの壁。あんなに雑誌を読みこんできたのに。ファッションを誰より愛してきたのに。夢だったはずの居場所で悦子がどんな結論をくだすのかが本書の読みどころのひとつだ。ドラマとはまたひとあじ違う、悦子の生き様をぜひ見届けてほしい。

 ドラマ版の悦子は、確かに原作以上に型破りだ。空気は読めないし、思ったことはすぐ口に出す。業界のルールなど何も知らないから、越権行為上等で自分が「いい」と思ったことをする。功を奏すこともあるだろう。だが迷惑をかけることもある。調子に乗って足元をすくわれることもある。そんな経験をした覚えのある人は、わりと多いのではないだろうか。「よかれと思って」が暴走して良くも悪くも事態は転がるのは、仕事でもプライベートでも同じはずだ。唯我独尊にみえる悦子も、失敗して落ち込まないわけでも反省しないわけでもない。部長や同僚に怒られれば素直に聞く。悪いときはしっかり謝る。そのうえで、落ち込んで何もしないよりはできることがしたいと前に突き進む、それが悦子の“空気を読まない”強さ。それはドラマも小説も変わらない。勇ましい彼女の姿が読者や視聴者にポジティブな元気を与えるから、ドラマも高視聴率発進を成し遂げたのではなかろうか。

 ちなみに視聴者にとっては、菅田将暉演じる幸人と悦子の関係、そして青木崇高演じる貝塚の存在も気になるところだろう。『~トルネード』ではその3人のバランスがにわかにゆらぎ、急転直下の衝撃展開を見せている。こちらもぜひドラマと合わせて楽しんでほしい。

文=立花もも