まさかのブーム！？　ニコニコ動画で盛り上がるTRPG動画

　アニメ化されて一大ブームとなった逢空万太のライトノベル、『這いよれ！ ニャル子さん』（逢空万太：著、狐印：イラスト/ソフトバンククリエイティブ）が今、ネットの中に思わぬ影響を与えている。それはTRPG（テーブルトークロールプレイングゲーム）ブーム。アニメからラヴクラフト原作の物語『クトゥルフ神話』に興味をもった人たちが、その元ネタを知る手がかりとして、手軽に遊べるTRPGに目をつけはじめているのだ。

　本来TRPGとは、サイコロや鉛筆などを用いて、自分がゲームのキャラクターとして参加者同士で会話しながら物語を進行していくという「ごっこ」遊び。キャラクターやルール、世界観はゲームによって大きく異なっていて、プレイした結果できあがる物語も実にさまざま。クリアされたゲームの一部始終を記録したものがリプレイ本として出版されることもある。クトゥルフ神話を元にしたストーリー『クトゥルフの呼び声』や、コンピュータに支配された世界を舞台にした『パラノイア』などは特に有名だ。

　数年前までは、プレイヤーの減少や市場の衰退などから、冬の時代などとも言われていたTRPG。だが、そのブームの兆しは、ネットを中心に着々と広がっている。

　そのひとつに、ニコニコ動画で話題となっている「TRPGリプレイ動画」のブームをあげることができるだろう。「TRPGリプレイ動画」とは、あらかじめプレイしたゲームの内容を編集してひとつのドラマのように仕立て上げた動画作品。もともとは、おもしろいプレイ結果を公開するためにつくられたものだったが、クトゥルフ神話が注目されて以降、非常にクオリティの高い作品が出揃うようになってきた。

　特に、『完璧で幸福なゆっくり達のクトゥルフ神話TRPG』や、『「ゆっくり実況」ゆっくり妖夢と本当は怖い「クトゥルフ神話」』、『「卓M@s」小鳥さんのGM奮闘記R「ソードワールド2.0」』といった動画シリーズは、ニコニコ動画の中で人気の高いアニメキャラクターやゲームキャラクターたちがTRPGで遊んでいる姿をドラマ化するという構成になっており、親しみのあるキャラクターたちが予想外の物語に翻弄されながらも立ち向かうドラマに、思わず引き込まれてしまう人も多いはずだ。

　また、視聴数が100万再生を突破して大きな話題を呼んだ『「初音ミク」こちら、幸福安心委員会です。（オリジナル）』という動画は人気ボーカロイド・初音ミクの楽曲だが、その歌詞の内容をよくよく聴いてみると、TRPGゲーム『パラノイア』の中身を踏まえた作品になっている。ブームはリプレイ動画だけでなく、楽曲までにも広がっている。

　現在、星海社の運営するウェブサイト『最前線』でも、虚淵玄や奈須きのこといった人気作家たちのプレイした結果が物語化された『レッドドラゴン』（講談社）が絶賛連載中であり、さらに9月28日には『クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえばーすでい （ログインテーブルトークRPGシリーズ）』（内山靖二郎、アーカム・メンバーズ/エンターブレイン）が発売される。書籍でも多くのTRPG関連本を目にすることができる今、TRPGに触れて、実際に友だちと書籍やネット上のリプレイ動画を元にプレイしてみるのも、おもしろいかもしれない。　　　　　　　　　　　　　　　

文＝ゆりいか