素粒子な成り立ちから考える私たちの「なぜここにいるか」

宇宙になぜ我々が存在するのか

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:村山斉 価格:864円

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宇宙になぜ我々が存在するのか。

魅力的なテーゼである。ぜひ知りたいと思う。それはこのテーゼが暗示する世界が大きいからだ。

風呂場になぜ我々が存在するのか。これでは駄目だ。

私たちの人生すべてを包み込むどころか、命そのものの発生から宇宙誕生の秘密までを射程に入れてしまう大きさは、なにものにも代えがたい。

宇宙になぜ我々が存在するのか。このテーゼには、いくつかのアプローチの仕方がある。

哲学的な考え方なら、私たちの意識が問題になってくるだろう。私がここに存在するという認識がなければ、存在していないのとおなじだからだ。突き詰めて突き詰めて「私が考えている限り、考えているという形で私は存在している」という結論にたどり着いたのがデカルトだった。

進化論的な考え方なら、最初の生命がどのように発生したかが中心命題だ。生命と非生命を分ける根本定義は、体内に酸素を取り入れ、老廃物をはき出す代謝のメカニズムだと思うが、酸素は細胞を殺す物質でもあるので、外界から体を保護する殻が生物には必要となる。酸素を取り入れなければ殻を作る活動はできないし、殻がなければ酸素を取り入れる前に死滅してしまう、そういう矛盾があるのである。なぜ我々が存在するのか、はっきりしたことはまだ不明だ。

宗教的には、まあいろいろ宗派はあるものの、神様が作ったことになっているのが多いか。ここでは「なぜ」は「なにをするために」の方に問いかけはずれる。この世で私たちはなにをすればよいのか。スマホでよいのか。問題は大きい。

本書ではサブタイトルにうたわれているように、物理学的な迫り方をしている。

まず宇宙の成り立ちから話は始まるからただ事ではない。興味はいっぺんにわき上がる。

この世には物質と反物質があると著者は説明する。私たちの身体も含めた身の回りを構成するのは物質。反物質は物質と正反対の電荷、つまり電気のかたよりをもっていて、物質とふれあうとものすごいエネルギーを放出して両方とも消滅するんである。あのダン・ブラウンの『天使と悪魔』に登場した究極の爆弾がこの反物質でした。

宇宙創生の時、物質と反物質は同数出現したはずなので、ふつうに考えれば一瞬にして宇宙は消滅したはずである。なのになぜ宇宙を作り上げるほどの物質が残ったのか、ここから著者はニュートリノをはじめとしたいくつもの素粒子のありさまと振る舞いを説明していくというわけ。

ちなみにニュートリノとは先ほど述べた電荷の偏りをもたない素粒子で、中性子のひとつ。

この本は講談社の「ブルーバックス」シリーズの1冊でして、いまほど簡単わかりやすい新書が多数登場する前、ガチガチの硬派の文化的読み物として覇をふるっていた。その流れをくんで、丁寧でわかりやすいとはいえ、やっぱりある程度の物理学素養がないと何度もページを行きつ戻りつする恐れがあるかもしれない。

しかし、星の爆発によってあらわれた物質から私たちの体もできている以上、私たちも星のひとつである。できればそそられていただきたいものだ。


反物質の発見

宇宙の95パーセントは不明の物質でできている

原子の中は宇宙とおなじでスカスカ

原子が地球の大きさだとすると、原子核は野球場



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