リドリー・スコット監督最新作。豪華キャスト共演の話題作、渾身のシナリオ本!!
公開日:2013/12/16
人間は有史以来、多くの発明やら発展をしてきましたが、それに匹敵するほどの悪行も重ねてきました。地球上で栄華を極める裏で、ありとあらゆる悪徳を行ったのが人間です。欺瞞や暴力など、およそ考えつく全ての悪事に、人類は手を染めているといっても過言ではないでしょう。なぜそうなのかは、わかりません。性悪説、なんていう言葉がありますが、人が非道を働くのはもしかすると、本当に自然の行いなのかもしれません。
本作はまさに、そういった日常と地続きとなった悪の世界を堪能できる作品。ちなみに小説ではなく、シナリオ本です。現在公開中のリドリー・スコット監督の映画『悪の法則』のシナリオ本であります。
主人公は極悪人でもなく、狂人でもありません。仕事もそこそこ、恋人との結婚も秒読みに入った善良な弁護士です。そんな彼が、違法行為に加担するというのが発端です。それがトラブルを起こし、だんだんと状況が切迫していくわけですが…、主人公は終始、善良なまま。悪に堕ちる、というのでもなく、悪に染まるのでもない所が絶妙です。
それが日常の仕事の流れのように感じるのです。法律というボーダーラインをまるで日付変更線のように、知らないうちに超えている。
シナリオ本という形式も相まって、淡々と、叙情的に進んでいく本著は、映画とはまた違った趣があります。緊迫感があるようで、常にフラット。小説家として名高いコーマック・マッカーシーが持ち込んだ原作とあって、台詞回しもさすがです。文学的で含みのある台詞は、映画よりもこちらの方がじっくりと楽しめるような気もします。ノーベル文学賞候補は伊達ではありません。
反面、映像を前提としたシナリオなので、文章だけでは分かりづらい部分も多くあります。映画を見たという前提で読めば、スーっと読んでいけると思いますが、そうでない場合には全部頭の中で登場人物を動かしたり、セットを組んだりする必要があります。監督業のような楽しみ方もまた一興ですから、個人的には本著を読んでから、映画を観ることをオススメ!
映画はブラッド・ピット、キャメロン・ディアス、ペネロペ・クルス、マイケル・ファスベンダー、バビエル・バルデムという豪華キャスト。映画を存分に楽しむ手引きとしても、単体のシナリオ本としても申し分のない逸品です。
冒頭。掛け合いの普通っぽさが物語を引き立てます
魅力的なオンナ! あれこれ想像で動かすのが楽しいキャラクターの一人
普通に幸せなシーン。幸せと同列に悪はあるのです