チート性能の仏教大学生たちが死体の願いを叶える妙作

更新日:2014/1/31

黒鷺死体宅配便スピンオフ 松岡國男妖怪退治(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:大塚英志 価格:648円

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 人はなにかしら後悔しながら生きているもの。その後悔をすべて解消して、心から安らかに死ねる人なんて、ごく一握りでしょう。突発的に死んだ、不慮の事故に巻き込まれて、死を選ばざるを得ない状況で…など、望まない形で死を迎えた“死体”がもし意思を持ち続けているのだとしたら、抱いている後悔や思いの度合いは計り知れないかもしれません。

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 さて、本作は、そんな死体たちの願いや思いを、5人の若者たちが叶える物語。5人の若者たちは、仏教大学に通う「ボランティア友の会」のメンバー。いずれも特殊能力を持っており、主人公は死体の声を聞くイタコ能力を、ほかのメンバーはそれぞれダウジング(探す)、エンバーミング(死後処理)、ハッキング(情報収集・操作)、チャネリング(交信)が可能。彼らが協力し合って、富士樹海や不法投棄のゴミ山などに分け入り、望まぬ形で死を迎えた「死体=依頼人」を見つけ、思いを聞き、思索し、望みの場所に死体を宅配したり、願いや思いを叶えたりしていきます。

 シリアスな題材であり、「新感覚ホラー」と銘打たれもいますが、タイトルに反してグロ描写は控えめで、ミステリー要素が中心となっており、わりとライトに描いているため、気軽に読むことができます。喋らぬ死体の思いを聞き取るというのが、もうチート性能で現実離れをしていますが、死体のこういった無念は実際に存在するんだろうなぁ、というリアリティと、それを叶えてあげた後の感動シーンが相まって、なんとも不思議な感情を呼び起こす妙作です。また、日本では何度かテレビドラマ化の企画が上がったにも関わらず、タイトルと内容から見送られてきた問題作でもあります。

 本電子版では、書き下ろしショートパロディコミック「黒兎死体宅配便」が収録されており、ちょっとおトクです。


イタコ能力を発揮する主人公

死体を大学に運び入れるってOKなのか?…というツッコミは抑えて。さて、死体の思いを叶えるために、どうするか。思索するメンバー

死体を宅配
(C)大塚英志/KADOKAWA 角川書店