超一流弁護士の描く電光石火の乗っ取り劇とその顛末、舞台は「株主総会」
更新日:2012/3/7
国際派の弁護士、牛島信の作家デビュー作。
リストラを宣告された一部上場企業の総務部次長が、株主総会で緊急動議を提出し、社長を始めとする役員をあっという間に解任する。一介の会社員が、電光石火で年商2000億の会社を乗っ取った。この会社に何が起こったのか? という内容。
奥付をみると、1997年に刊行された作品。
そのあたりを考慮した上で読むと、非常に興味深いワードがいくつも出てくる。
“ホワイトナイト”、”マネジメント・バイアウト”、”ゴールデンパラシュート”。
ライブドアの仕掛けたフジテレビ買収問題を扱うニュースで一般的になった経済用語が、この作品では頻繁に登場する。
導入部分は本当に戦慄を覚えた。物語と同様のシチュエーションが準備されていれば、本当に株主総会を利用した乗っ取りが成立してしまうのではないか? と思わせる。
法務関係が充実している現在の一般的な会社組織ではおそらくあり得ない話である、とは思うのだけど、いわゆる”総会屋”が幅を効かせていたあの時代であれば、充分にあり得そうなエピソード。かなりドキドキしながら読める。
ただ、中盤~後半の”顧問弁護士”に主役がスライドしていく部分がやや冗長な気が。作者自身が検察・弁護士を経験していただけに、怒濤の書き込みになってしまうのは理解出来るのだが、残念ながらこの手の知識に乏しい自分は深く入り込む事ができず。逆に、会社法や商法等の法律に明るい人が読めば、この部分がいちばん楽しめるのかもしれない。
しかし、決して難解な作品ではなく、どちらかといえば非常に読みやすい。
商法や株主総会関する知識も、きっと自然に入ってくることと思う。株主総会が行われるタイプの会社に勤めてるサラリーマンは、スマホに入れておくと何かの時の役に立つかも(^^;)。読み物としてのボリュームも、かなりちょうど良い感じなので。
最近のオススメセッティング:縦組み・文字サイズ小・秀英横太明朝M・文字色白・背景黒
ビジネス系の小説なので、横組み・ゴシックでも違和感なし
わからない言葉があれば、単語付近長押しでGoogle、Wikipediaでの検索可能。辞書アプリがインストールしてあればそちらでも!
文字サイズを比較してみる:こちらは「中」、「小」と大きく変わらない感じ
文字サイズを比較してみる:「大」、大きくて読みやすいのだけど、ページ送りが多くなるのが面倒