満ち足りた人生を送るにために必要なのは、他人をとことん蔑む心! …なのかも?
更新日:2012/3/5
「あの子、急にキレイになってるじゃん! 昔は地味でパッとしなかったのに~」
「今日だけ気張ってめかしこんじゃって。いつものアンタを知ってるんだからねッ」
久しぶりの同窓会や勝負を賭けた合コンにて、女友達に対してこんな意地悪い気持ちになったことありませんか? エッ、私だけでしょうか?
本著では、そんな女子のタブーな胸の内をこっそりのぞき見できちゃいます!
主人公は、男に頼らず、恋愛に溺れず、たゆまぬ努力で今の社会的地位を勝ち取った女たち。美容評論家の加奈とファッション誌編集者の美也子は、どちらともなく寄りそうように代官山にマンションを買い、いつの間にか相互依存の関係に。紀伊国屋で買ってきたハイソなつまみをつつきながら、他人の悪口に興じるのが専らの楽しみだ。周りを否定することで自分たちを肯定して、自分こそが“本物を知る、本物の女”と信じて満たされている。
しかし、実は一番見下しているのはお互いのことだったり。美也子が加奈に買ってきた手土産のケーキを、
「コイツぅ…、私を太らせるために買ってきやがって!」
なんて密かに罵倒するのは朝飯前。年を重ねる毎に太りやすくなってきた加奈は、
「でも私が男なら、絶対美也子より私を抱きたいハズだわ」
と、熟れた体こそ魅力的だと思いこむ。対する美也子は加奈をやんわり褒めながら、
「私には他人を褒めてあげられる、大人の余裕がある。国際レベルの“知的な大人”だよね~」
なんて、心の鼻を鳴らすのだ。
そこに登場するのが、キャリアウーマンの二人とは違って“男にラクさせてもらうのが一番♪”がモットーのぶらさがり女・ナオ。小銭持ちの男を捕まえて、白金にワンルームマンションを買ってもらっている。
「女がどんなに一生懸命働いたって、中古のマンションを買うのがやっと。最初から勝負は決まってんのよッ」
囲われライフを謳歌しながら、働く二人を批判するナオ。そんな彼女が加奈と美也子にとって、バカにする恰好の材料となっているのは言うまでもない。
…と言うと、厭味と悪口のオンパレードのような本著ですが(いや、実際そうなんですけれど)、彼女たちの語り口があまりにも嬉々としていて痛快! なんとも絶妙なバランスで、お互いを必要悪に仕立て上げる彼女たちの強かっぷりが見ものなんです。“いまさらジロー”なんて昭和ギャグが随所に飛び出してくる会話もなんだか憎めない。
あ~、こういう女いるわ~って彼女たちに同調して笑いころげながら、ふと気が付くと会話の渦中にいるのはもしかして私なんじゃ…とギクッとする、けっして他人事じゃない一冊。
「どう? バングス(前髪)、作ったのよ」と加奈のマンションに美也子が訪れるところから始まります。はたして加奈の反応は…
物語は主に加奈の語りで進んでいきます。髪を切ってイメチェンした美也子を、「オカマのよう」とか、昔は「『リング』の貞子みたいだったのに」とか、しょっぱなから言いたい(もちろん心のなかで)放題です!
しかし美也子も負けてはいません。紅茶を淹れながら茶葉の蘊蓄を延々と語る加奈に対する返答が、「ふーん」と素っ気ない!