荒ぶる有袋類が二軍落ちの内幕を語る! 電子出版オンリーのドアラ本を見逃すな
公開日:2012/2/27
怒濤のフリーダム。荒ぶる有袋類。キモい。そんな呼び名(最後のは呼び名か?)を持つ中日ドラゴンズの人気マスコット、ドアラが3冊目の著書を出した。しかも今回はなんと電子出版オンリー、紙での販売は予定してないという。
ドアラはドラゴンズの試合で7回終了後に、捻りを加えた宙返りをするのが恒例となっている。それに成功すればドラゴンズはその日の試合で勝つ、という運試しだ。ところが昨シーズン、ドアラは絶不調だった。成功率が2割を切り、日本球界初となる「マスコットの二軍落ち」が決定。灼熱のナゴヤ球場で(そりゃもう人間の何倍も熱かったであろうことは容易に想像がつく)若手と一緒にトレーニングに励み、一軍に復帰してからはある選手のアドバイスを受けて何とか復活。まさにドアラにとって昨年は、重い荷物を背負って坂道を上るような1年であったと言えよう。
その過程を書いたのが第一章「ナゴヤ球場の中心で暑いとつぶやく」と第二章「飛べないコアラはただのコアラ」だ。その苦悩、その艱難辛苦は涙なしには読めない…と思いきや、うわはははは! …あれ? なんで笑ってるんだ私。ドアラだからか。しかもヤツがあまりにテキト~なことを書くので、ときどき編集部からお叱りやツッコミが入る始末。さすがフリーダムの申し子、ドアラだけのことはある。転んでもタダでは起きない。っていうか、起きない。基本、だらけている。が、そこがいい。
第三章以降は私生活やチーム内での話。最終章「そして病院へ」は、シーズ終盤に患った下半身の闘病記。って、おいおい、どこの世界にそんな話を書く球団マスコットがいるかと。自由にもホドがあるだろうと。ちょっと冷静になれドアラ(と版元)。
驚くのは豪華なゲストだ。ジャーナリストの津田大介さんとドラゴンズの高木守道監督が登場している。三十年来のドラゴンズファンという津田さんはインタビューの中で昨年からの監督人事の報道について触れ「それで失ってしまったものも、きっとあるはずです。そういったものをつなぎとめる重責をドアラが背負っている部分もある」と指摘。また、高木監督もドアラへの期待を語っているが、自分がかつて指揮をとっていた1994年にドアラが登場したと聞いて「いたんですか!?」と驚いていた。気づいてなかったらしい。
ツイッターなどを見ていると、電子書籍未経験だったドラゴンズファン(とドアラファン)たちが販売サイトを見比べ、選び、登録し、わくわくしながら初めての電子書籍に挑戦している。野球に興味のなかった層を取り込んで球場へ足を向けさせたように、電子出版界もドアラが牽引するのか。どこまで行くんだこの有袋類は。まあ、それはそれとして、今シーズンはまぁちょっと宙返りの成功率を上げてくれんと、ファンとしてはヤキモキしてまうがね。頼んだでよドアラ。あと痔には気をつけやあ!
ムダに偉そうな著者近影
扉はビジターユニフォームで。患った箇所が巧妙に隠されている
「ほんとにね」の一言がドラゴンズファンをにやりとさせるよね。ほんとにね
同じ部分を画面の小さいiPod Touchで見るとこんな感じ
著者略歴。CDという文字を見ると無条件に「中日ドラゴンズの略」と考えてしまうファンのため、わざわざ「コンパクト・ディスクのほう」と注意書きがあるのが嬉しい