柔軟剤・消臭剤の香りがキモチワルイ!「化学物質過敏症」「香害被害者」の痛みと哀しみ

暮らし

公開日:2019/5/26

『マイクロカプセル香害 ──柔軟剤・消臭剤による痛みと哀しみ』(古庄弘枝+被害者・発症者の声/ジャパンマシニスト社)

「柔軟剤や消臭剤で気分が悪くなった」…“香り”にまつわるアイテムが身近な現代人ならそんな経験があるかもしれない。ドラッグストアでは、衣服に香りをつけるための製品がバラエティ豊かに並んでいて、すぐに手に取ることができる。ライバル製品に負けじと長時間香らせる仕組みにしたり、アロマの質や組み合わせにこだわったりと、さまざまな工夫がされている。そんな製品の“香り”があまりにキツすぎる人と電車や職場で会い、嫌な顔をしたくなった経験はないだろうか。その「嫌な顔」だけでは終われない人々がいる──。

『マイクロカプセル香害 ──柔軟剤・消臭剤による痛みと哀しみ』(古庄弘枝+被害者・発症者の声/ジャパンマシニスト社)は、“化学物質過敏症”の人々の現代特有の苦しみを明らかにする1冊だ。“化学物質過敏症”は、非常に微量の化学物質でも健康被害が起きるという疾病概念。個人差が大きく、発症原因や症状は多種多様で、十分な解明は進んでいない。日本で人口の約7.5%が“化学物質過敏症”であるという報告もある。

 現在、さまざまな製品に使用されている「香料」がその人々を悩ませている。日本で柔軟剤がはじめて登場したのは1962年。その後、ユニークさを求め続けられた柔軟剤の競争はこの10年で激化している。その香りが「頭痛」「吐き気」「めまい」といった症状から「息ができない」「生活がままならないほどの倦怠感がある」などの耐えがたい症状を引き起こす場合がある。

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 問題なのは、その症状が「勘違いを受けやすく、理解されにくい」ということだ。「香りで気分が悪くなる」と訴えると、単なる“好み”の問題にされやすい。みんなが平気で過ごしているなか、ひとりだけそう訴えるので「好き嫌いのある人」「神経質な人」「クレーマー」とみなされたりする。また、以前はこの種の“香害”が見受けられなかったために「それくらいのことで体調を崩す人なんていなかった」と、“ひ弱”の一言で片付けられてしまうかもしれない。

 近年、香りの演出として、アロマディフューザーを駅や市役所などの公共の場に設置する取り組みがいくつもあったが、それらは化学物質過敏症の人や団体などから抗議を受けた。日常でも「いつも会う人の服の香りがきつい」「芳香剤スプレーの残り香で気分が悪くなる」「自宅では気を使っていても、保育園が柔軟剤の香りで充満している」といった問題が待ち受けている。ただ外を歩くだけでも、そこは人工の香りまみれなのだ。

“香害”には、周囲の配慮が必要であろう。「自分はそう思わないけど、誰かにはイヤな香りをつけているかもしれない」と考えてみるのも良いだろう。もし「香りで具合が悪くなる」という人がいれば、本人の好き嫌いで片付けずにきちんと対策を考えてあげることも必要だ。人は、ある香りをつけることに慣れてしまうと「香りが足りない」と感じ、どんどん付け足してしまうこともある。だが、それが他人を苦しめている可能性だってあるのだ。自分の“麻痺”が周囲に与える影響を知ると、誰かひとりの日常を救うことができるかもしれない。

文=ジョセート