絶望にはなれあうか、共に生きるか、二つの道しかない

ライトノベル

公開日:2012/9/14

ガガガ文庫 ストレンジボイス

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル:ライトノベル 購入元:電子文庫パブリ
著者名:江波光則 価格:324円

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ライトノベルである、外装は。ガガガ文庫。中身はちょっと違う。まず文体が真摯。むずかしくはないけど、何か誠実。深いところに射程があたっている。ふつうに読めるくせに。次に、キャラクターが明確。かつ、お約束でない。別のいい方をすれば、ちゃんと生きている。3つ目、お話が暗め。そりゃそうだ、青春の一時期に孤独と自意識に取りまかれ、どうやってサバイブするかって物語なんだから。暗いかわりに、本のどこを切っても血の出るような感動が吹き出る、「あなた」の一冊である。陰鬱なものの中にこそ「美」があると私は思う。

舞台は、ある普通の高校。凄惨なほどの「いじめ」を繰り返す日々希がいる。彼の「いじめ」の標的となり、体中に重い傷を負ったあげく、登校できなくなった遼介。そして語り手である水葉はそれを傍観しながらも、傍観者であることに罪悪感を持ち、そのうえ人と交わることが恐ろしく、交わりたい願いも抱えながら、解決できない「自分」に傷つき怯え、なんとかこの青春を生き残ろうともがいている。要するに、若さの中のグルグルだ。

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だが、誰もが経験した若き日の一般的なグルグルも、キャラクターを立てて描きこまれれば読み手の心を動かす。実は「いじめ」というのは、加害者と被害者という平面の出来事じゃなく、それを取りまく傍観者たち、つまりほかの生徒たちを交えて成立する構造物だ。誰かに見られる、見るものがいる、そのとき「いじめ」は「いじめ」として機能する。つまり、生き残りをかけているのは私たちみんななのだ。

卒業式の証書を届けに、水葉が遼介の家を訪ねるところから物語は転がりはじめる。見違えるばかりに鍛え上げた体になり絶対に日々希を殺すと叫ぶ遼介。人の「なまの姿」に迫られると絶えられない水葉は、嘔吐して失神してしまう。

ラストには、生き残るためのひとつの解答が示されはするが、それは苦く、つらい姿をしている。


いじめのせいで不登校になった、そんな遼介が卒業式にやってくるらしい、怪しい噂が生徒たちの胸を騒がせる

そのいじめは相当ひどいものであったようだ

やがて語り手である水葉の秘密が語られ始める