佐々木希が選んだ1冊は?「読みながら感情がぐちゃぐちゃになり、気づけばイヤミスにハマってました」

あの人と本の話 and more

更新日:2025/2/6

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年2月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、佐々木希さん。

(取材・文=倉田モトキ 写真=TOWA)

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「私がミステリー小説を好きになったきっかけの一冊です」と手にしたのは湊かなえさんの『告白』。
「〈イヤミス〉(嫌な気分になるミステリー)にハマり、私の中にこうした陰鬱な世界を楽しむ一面があったんだと知ったのも意外な発見でした」

 自分の生徒に我が子を殺された中学教師の森口。ホームルームで明かされる彼女の“告白”に、佐々木さんは読む手が止まらなかったと言う。

「森口先生の淡々とした言動が怖くて、被害者遺族であるはずなのに、次第に先生が悪者のようにも感じられていく。被害者や加害者という境界線を越えて、人間のエゴや身勝手さ、それに復讐心といった感情だけが浮き彫りになる展開に、私の心もぐちゃぐちゃになっていきました」

 ページをめくりながら、やがて佐々木さんの心の中は、「誰に共感したらいいのか分からない」から、「どの登場人物にも感情移入してしまう」へと変化していったそうだ。

「罪を犯した中学生たちの行動は森口先生の立場で考えると到底許せない。でも、子どもたちの背景を考えると心が痛くなる。正義と悪って立場が違えば見え方や捉え方が真逆にもなるし、その意味ではとても曖昧で、怖いものなんだと感じました」

 まもなくスタートするドラマ『地獄の果てまで連れていく』で主演を務める佐々木さんは、「私も今、とんでもない化け物と戦っています」と笑う。今作で演じるのは、学生時代に父親を殺され、自身も殺人犯に仕立て上げられた橘紗智子。積年の恨みを晴らすため、自分を陥れたかつての後輩・麗奈を追い詰めていく。

「10年以上も恨み続け、容姿と名前を変えてまで復讐しようとしているのに、相手を前にすると弱さや葛藤が出てしまう。反対に、正体はバレていないはずなのに、麗奈に弄ばれているようなところもあって。復讐する側が振り回されているという点でも、新しいドラマだなと感じます」

 麗奈役を演じるのは渋谷凪咲。良心や罪悪感を一切持たず、笑顔で周囲を傷つける姿はまさに化け物だ。

「麗奈はずっと他人の痛みが分からずに生きてきた。それだけに、彼女の人生を考えると涙がこぼれました。でも、紗智子の気持ちもよく分かる。辛い過去を忘れてしまったほうが幸せになれるのに、何かしらの行動をしないと前に進めないんだろうなって。怖さの詰まった復讐劇ではありますが、二人の未来を想い、『ラストはイヤミスでありませんように』と願っている自分がいます(笑)」

ヘアメイク:高橋里帆(Happy Star) スタイリング:金 順華(Sable et plage) 持道具:松尾桃花 衣装協力:ワンピース・ジャケット ALLSAINTS(オールセインツ ジャパンTEL0120‐752‐370)

ささき・のぞみ●1988年、秋田県生まれ。2006年芸能界デビュー。以降映画やドラマ、CM、雑誌など多岐に渡り活躍。3月14日公開の映画『お嬢と番犬くん』に出演。また、ワンマイルウェア『iNtimité(アンティミテ)』のプロデュースを手掛けるほか、昨年7月にはYouTubeチャンネル「佐々木希(仮)」を開設。

『告白』
湊 かなえ 双葉文庫 681円(税込)
最愛の娘を亡くした中学教師の森口。「このクラスの生徒に殺されたのです」というホームルームでの彼女の告白から始まる真犯人探し。章ごとに語り手がクラスメイトや犯人の家族、そして犯人へと変わっていき、やがてラストは衝撃的な展開を迎える。「イヤミスの女王」と呼ばれる湊かなえの渾身のデビュー作!

ドラマストリーム『地獄の果てまで連れていく』
脚本:イ・ナウォン 監督:松田礼人ほか 出演:佐々木 希、渋谷凪咲、井上祐貴、吉澤閑也、板尾創路ほか 1月14日(火)よる11時56分よりTBS系列で放送開始 
●学生時代、“人殺しの娘”と誹謗中傷を受けていた幸和子を救ってくれた後輩・麗奈。しかし、彼女こそが真犯人であり、やがて幸和子も殺人の罪を着せられてしまう。すべてを知った幸和子は14年後、橘紗智子と名乗り容姿も変えて、麗奈に復讐を誓う。