心の機微を描いた11の物語。柚月裕子初のオムニバス短編集『チョウセンアサガオの咲く夏』インタビュー
11の短編に、柚月裕子の13年間が詰まっている。「孤狼の血」シリーズ、『盤上の向日葵』など、数々の作品で読者を虜にしてきた著者が、このたび初のオムニバス短編集を上梓した。
(取材・文=野本由起 撮影=冨永智子)
「読み直すの、けっこうつらかったです(笑)。私はデビュー作が長編でしたので、短編をご依頼されても長くなるきらいがあるんですね。特にショートショートは、原稿用紙5、6枚に収めるのに苦労した思い出があります。ゲラを読み返して、『そうそう、これ大変だったよね』って」 今読み返すと気恥ずかしいそうだが、どれも柚月さんの大切な足跡。 「『今ならこうは書かないな』という文章も多いんですね。その時々で、自分ができる限りのものを書いているはずなんですけど、今読むと流れがぎこちないなと感じるところも。デビュー以来、どうすれば読みやすい文章になるか自分なりに考えてきたので、多少なりとも成長したんでしょうか。過去の自分もここに残しておくべきかなと思い、ほとんど改稿はしませんでした」 認知症の母を介護する娘の秘密に迫る表題作、戦時下のペリリュー島を描いた感…