【KADOKAWAタテスクコミック編集部】社内コンテストからレーベル立ち上げ。スマホで読める「タテスクコミック」の魅力とは【インタビュー】

マンガ

公開日:2025/1/24

「次がわからない」というドキドキ感が続くのがタテスクの魅力

――毎週アップすることや、フルカラーであるということで、横読みの漫画を作るのとは違う難しさがあると思うのですが、編集担当として、もっとも大変なところはどこですか?

今井:私自身、編集者として経験が浅いというのもあるんですが(笑)、作家さんのペースをふまえつつスケジュール管理をしながら、毎週、読者の皆さんを惹き付けるクオリティで作品を作り続けることはとても難しいですね。週刊連載を複数本担当しているんですけど、まだやり方を模索しているところです。

塙:タテスクコミックはフルカラーなので、1人の作業で完結することが少ないんですね。着彩工程を担う方がいるなど、横のモノクロ漫画よりも関係者が多くて、そういう部分の調整も難しいんですよ。

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坂野:漫画制作の中でも新しい部分のディレクションが必要で、編集者にとっても、従来のモノクロ漫画とはまた違う技能が求められていると感じますね。

今井:横読みと比べて、ページや見開きの概念がないことで、区切らずに文字をずっと下に読ませるダイナミックなコマ作りや、キャラと読者と目線を合わせるなど、工夫できる部分が多いんです。フルカラーならではの装飾や演出で読者の目を引くことができるので、横読みとはまた違う読み応えを実感していただけるよう、こだわって「見せたいコマ」を作っています。

坂野:見せたいコマしか見せられないのが、タテスクコミックの長所なんですよね。横読みの場合は、ぱっと見開きを開くと、左右両方のページが見えてしまう。だからこそ「特にめくりに注力しましょう」という教科書的なメソッドがあるんですけど、タテスクコミックは常に「めくり」があるようなもの。だからこそ、「次がわからない」というドキドキ感を常に出し続けることができるんです。

――なるほど。常にクライマックスなわけですね。

坂野:そうです。でも、だからこそ常に楽しませるための工夫が求められるんですよね。「次はどうなるの?」ってわからない状態のまま、楽しんで読み続けられる作品作りは、すごくチャレンジングですね。

海外作家とタッグを組んで面白いタテスク作品を作る

――先日、「第4回オールKADOKAWAによるタテスクコミック大賞」の結果が発表され、受賞作も配信されていますが、KADOKAWA全社をあげて開催するこの企画の最大の意義は何ですか?

寺谷:事業立ち上げにあたってもっとも大事にしたのがこの「タテスクコミック大賞」であり、この編集部の源泉です。というのも、我々は出版社ですので、描き手の先生がいらっしゃって初めて事業が成立するわけです。同時に今、日本で漫画家になりたい方がイメージすることが多いのは、横読み漫画だと思います。縦スクロールの漫画にチャレンジしたい、または縦スクロールなら自分が描きたいことを表現できるという方々に集まっていただかなければ面白いオリジナル作品は作れないということで、当初から注力しています。

 オールKADOKAWAとして、コミックの全編集部が参加する賞はこれだけです。今後、縦スクロールの漫画を好む読者が増えていく将来を見据えて、どのコミック編集部も縦スクロール漫画を作れるという土台を整えるためにも、オールKADOKAWAで開催しています。

塙:タテスクコミック大賞は2023年から「TATESC COMICS Global Awards」として世界の作家さんも募集しています。先日、2024年の第2回が終わったんですが、今回は特に韓国からの応募が多くて、実力の高さを感じる作品の応募が複数ありました。タテスク編集部には韓国語話者も複数いますし、日本の会社と一緒に作品を作りたいという海外の作家さんが増えています。今後、海外での販売にも注力していくという構想において、海外作家さんと共に面白い作品を作っていける手応えを感じていることは、かなり明るい兆しです。

坂野:漫画家を目指す方は「この漫画雑誌で書きたい」という思いがある方も多いですよね。でも、タテスクコミックも、そのひとつの場所と捉えていただきたいと思っているんです。

 というのも、横読みと縦スクロールは、表現方式の違いはあるものの、作り方の基本は変わりません。縦の表現の中で、モノローグでしっかり雰囲気や情緒を伝えながら画面を構成していくことは少女漫画の作家さんが得意ですし、迫力のある画面作りは、少年漫画を長らく描いてきた作家さんが上手です。カラー漫画ならではの緻密さや3D表現はアシスタント経験の長いベテラン作家さんが得意ですし、作家それぞれの個性を活かせる漫画のジャンルだと思いますね。

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