「事務作業」を疎かにしては何も成し遂げられない? 『生きのびるための事務』に学ぶ、人生を有意義に過ごすための方法【書評】
更新日:2025/1/31

誰しも幼い頃、“将来の夢”を考え、胸を膨らませたことがあるだろう。けれど大人になり「生活のため」「家庭のため」にと、生きるために現実を選択する人もいるかもしれない。しかし、「このままでいいのかな」という感情を抱いたことはないだろうか。
『生きのびるための事務』(坂口恭平:原作、道草晴子:漫画/マガジンハウス)は、そんな人たちの背中を押してくれる1冊である。題名を聞くと「ビジネススキルの話?」と思うかもしれないが、本書で語られるのは小手先のスキルの話ではない。人生を有意義に過ごすための、“生きのびるため”の事務スキルの話である。
原作者は、作家・建築家・画家・音楽家・「いのっちの電話」相談員として活動する坂口恭平さん。本書は優秀な事務員・ジムとの対話で学び、坂口さんが人生で実践した方法をまとめた1冊。「事務」ってめちゃくちゃ大事! ということが漫画でわかるのだ。
通常、事務といえば家計簿や領収書や請求書……そんなイメージを持つ方も多いのではないだろうか。だが、本書の「事務」は意味が異なる。「小さい頃から本心でやりたいと思っていることを実現するための方法」それが事務なのだ。そしてそれを継続するために、具体的な数字や言葉にする技術のことである。
坂口さんがお金もなく無名の頃から、好きなことで生活をしている現在にいたるまでが描かれている本書。イマジナリーフレンドであるジムが、ジョークも交えながら会話形式で生きのびるための事務について教えてくれる。そして読者が抱くであろう疑問や、「そんなうまくいくの?」というような疑念も、恭平がジムに問いかけることで理解が進みやすい。
ジムは「事務の仕事で重要なことはスケジュール管理とお金の管理」だという。それぞれの方法と、どうやって将来につながっていくかをジムの教えをもとに恭平が実践していく。とても具体的な実践方法のため、読みながら「早く自分もやってみたい!」とワクワクするのだ。そして恭平とジムの会話の中には、人生を充実させるために心に残しておきたい言葉がたくさん詰まっている。
これを読めばあなたの心の中にも優秀な事務員を雇うことができるだろう。そして、望む道へのスモールステップが明確になっているはずだ。「このままでいいのかな」「なんとなく夢はあるけど現実は難しいよね」と思っている人に、“生きのびるため”に人生を彩ってくれる1冊となるだろう。
文=ネゴト / いなり