『北斗の拳』の前日譚は北斗vs.北斗の死闘が熱い! 魔都・上海を舞台に描かれる友情と愛と覚悟の物語『蒼天の拳』

マンガ

PR 公開日:2025/2/2

蒼天の拳原哲夫:漫画、武論尊:監修/コアミックス

 友情と愛、そして覚悟の物語。それが北斗神拳伝承者・霞拳志郎(かすみけんしろう)の活躍を描く『蒼天の拳』(原哲夫:漫画、武論尊:監修/コアミックス)である。

 本作は1980年代に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された世界的な大ヒット作『北斗の拳』の前日譚だ。1930年代の魔都・上海を舞台に、ケンシロウの2代前の北斗神拳伝承者・拳志郎が、強力なライバルたちと“死合う”(しあう)ストーリーである。バトルアクションはもちろん、太平洋戦争前の混迷の時代という歴史的な背景を織り交ぜた展開、そして戦いを通じて北斗神拳の歴史や謎が語られていくところも本作の大きな魅力だ。

北斗神拳の伝承者・霞拳志郎とは?

 中国・上海で、かつて閻王(えんおう)と恐れられたひとりの拳法家がいた。彼は上海裏社会の秘密結社「青幇」のため、敵対する「紅華会」の幹部を皆殺しにして姿を消していた。

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 それから数年を経て、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀が伝説の閻王を自分を護衛する禁衛隊に加えるため、元「青幇」の李永健を連れて日本へやって来た。そして李は、かつて閻王と呼ばれた第62代北斗神拳伝承者・霞拳志郎と再会する。喜び邂逅するふたりだが、李がもたらした報せは衝撃的なものだった。

 上海では「紅華会」が力を盛り返し「青幇」が全滅したというのだ。「青幇」の幹部には、拳志郎の朋友(親友)の潘光琳、そして潘の妹で拳志郎が愛した玉玲がいる。拳志郎は、再び地獄と化したという上海へ向かう。

 物語の中心は、やはり愛と友情に厚く、信念を貫く霞拳志郎だ。最強の暗殺拳の伝承者であるにもかかわらず、相手の命をみだりに奪わない。またトボけたところもあり、仲間たちとの絆を一番に考える人間的な魅力もある、まさに“蒼天”のような爽やかでとらえどころのない男なのだ。そんな彼の前に立ちふさがる強敵たちとは?

北斗vs.北斗!? 「覚悟」持つ者たちの戦いの行方

 銃や爆薬といった近代的な兵器があろうとも「北斗神拳」は無敵のように思える。特に私のような『北斗の拳』の読者であれば。しかし、中国は北斗神拳の発祥の地だ。裏社会の抗争が物語のベースになってはいるが、次々と強力な拳法家たちが登場し、拳志郎と、北斗神拳とぶつかり合う。

 中国の三国時代、北斗神拳から分かれた三家があった。それが魏の「曹家」、呉の「孫家」、蜀の「劉家」だ。それぞれで拳法が生まれ、北斗神拳と共に継承されてきた。それが曹家の北斗曹家拳、孫家の北斗孫家拳、劉家の北斗劉家拳である。

 北斗曹家拳の使い手として「霊王」を名乗る芒狂雲や、フランス軍の情報武官であるシャルル・ド・ギーズが登場する。芒狂雲は「北斗神拳を超える」という野望を持ち、かつて拳志郎の恋人・玉玲を愛した男だ。

 また、北斗孫家拳の使い手が張太炎。紅華会の二番頭で色欲と美女を好み、彼もまた玉玲を巡って拳志郎と拳を交えることになる。最後に控える北斗劉家拳の伝承者・劉宗武を加えたこの北斗三家の拳が、北斗神拳の因縁の相手となって立ちふさがる。他にもさまざまな拳法とその使い手たちが現れる上海で、拳志郎は北斗神拳の最強を証明できるのか。言うまでもないハイクオリティな作画による迫力の拳法バトルは必見である。

 物語の舞台である1930年代の上海には混迷を極める歴史的な背景があり、そこで命懸けで生きる登場人物たちが持つ「覚悟」が『蒼天の拳』のテーマだ。

 仲間と愛する人間を守る。自分の地位を確立する。信念を貫く。そして最強を証明する……。これらはすべて命を懸けた「覚悟」である。拳志郎だけではなく、彼の仲間も愛する人も、そして強敵たちも、皆、「覚悟」に殉ずると決めている。

 そんな彼らの生き様に、きっと誰もがまた心を熱くするだろう!

文=古林恭

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©原哲夫・武論尊/コアミックス 2001

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