5年間引きこもっていた息子が“ちいこ”になって現れた…母親の自己嫌悪と父親の決意に「涙が出る」「刺さる」と反響【漫画家インタビュー】
公開日:2025/1/31

最新の書籍や人気の漫画作品の情報を発信する「ダ・ヴィンチWeb」。今SNSを中心に話題を集めているホットな漫画を、作者へのインタビューを交えて紹介する。
本稿では、人類の半数が“ちいこ”という謎の生命体になってしまった世界を描く連作短編『人類の半数がちいこになった』を紹介。可愛らしさの中に切なさを強く感じる本作には、「涙が出る」「とても重い」「刺さりすぎる」と反響が相次いでいる。この記事では、作者のおおつか ちょん(@_chonotk)さんにインタビューを行い、創出のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
引きこもりの息子が“ちいこ”に…母親を襲う喪失感と自己嫌悪
おおつか ちょんさんが描く『人類の半数がちいこになった』は、ある日突然、人類の半数が“ちいこ”と呼ばれる謎の生命体になってしまった世界が舞台。無邪気なちいこと、ちいこたちを取り巻く人々の日常がときに賑やかに、ときに静かに描かれていく。
なかでも、ちいこになった引きこもりの兄とそれを見守る家族の物語は累計22万いいねを超えるなど大きな反響を呼んでいる。当事者を含めた家族四人それぞれの視点で語られる「息子がちいこになった日々」は、どんな物語なのだろうか。
ある日、5年近く引きこもっていた長男がちいこの姿になって母親の前に現れた。母親は息子を失った喪失感を感じながらも「引きこもりの息子」がいなくなった事実にホッとし、そしてそんな自分を責めてしまう。
ちいこは、食器を拭く母親を手伝おうと雑巾を持ってきたり、道に咲く花を摘んで見せたり、遊びながら寝入ってしまったりと無邪気にふるまう。息子がちいこになった生活に慣れない母親は、ちいこの愛らしい姿にも困惑していた。
しかし、幼いころの長男の姿が収められたアルバムを見た母親はハッとして涙を流す。そこに映っていたのは、今のちいこと同じようにふるまっていた息子の姿だったからだ。
「この子は息子だ。」
そうして母親は、本当の意味でちいことなった息子を受け入れていく。
反面、父親はちいこを息子だと思えないまま日々を過ごしていた。ちいこになった息子のことを受け入れた妻を「心が壊れた」と思ったが、自分が知らない息子の姿を妻は知っているだけなのだ、と気がつく。頭では理解しつつも、やはりちいこを息子としては受け入れられず、その気持ちを墓場まで持っていくことを決意するのだった。
この物語は両親を見る弟視点、ちいこになった兄視点からも描かれていく。読者からは「引きこもりの兄の真理がリアル」「心をえぐってくる良い作品」という声が寄せられ、多くの人がこの家族の物語に心を揺さぶられているのが分かるだろう。
漫画の作者・おおつか ちょんさんに作品ができあがるまでの話を伺った。
「面倒臭い人がちいこになったら気持ちが楽になる」。創作のきっかけとは
ーー『人類の半数がちいこになった』を創作したきっかけや理由を教えてください。
仕事で疲れていた時に「面倒臭い人がちいこになったら気持ちが楽になるのにな」と思い描きました。
ーー本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはどこでしょうか。
無垢で無邪気なちいこたちとちいこを取り巻く人々の感情や生活などです。
ーーうさぎやアライグマなど、さまざまな形状のちいこが登場しますが、いちばんのお気に入りはなんですか?
形状としては、クマのちいこがお気に入りです。一番描きやすいです。
ーー特に気に入っているシーンやセリフを教えてください。
迷子のちいこうさぎが飴を袋ごと口にいれるシーンが好きです。食べ物だと認識しているのに個包装の開け方がわからず、袋のまま何度も口に運んでは出してを繰り返していたであろうことを思うと苦しくなるからです。
ーー飴を袋ごと口にいれる、雑巾で家事を手伝おうとする、など健気で胸がぎゅっとなるちいこの行動はどこから着想を得ていますか?可愛らしさのヒントも教えてください。
頭の中にキャラクターを置いて、そのまま動いてもらってシミュレーションをしているので、その中で勝手に健気な行動をしています。
可愛らしさのヒントはわからないですが、短い手足で身振り手振りしてるのは可愛いなあと思いながら描いています。
ーー「息子がちいこになった。」からはじまるお話では、母・父・兄・弟それぞれの視点からエピソードが描かれていました。 4つのうち、一番思い入れがあるお話について聞かせてください。
父親視点の話です。
節目でしか息子と関わっていなかったり、ちいこを息子だと思えないなど、薄情者だと思われるかもしれません。それでも、兄からすれば人生の重要な場面で相談をできるだけの信頼がありましたし、ちいこを息子だと認識した妻に対して否定するのではなく、息子と多く接してきた妻だからそう思えたのだと理解し受け止めるなど、息子だと思えなかった人なりの家族への愛情が描けてよかったです。
ーー今後の展望や目標を教えてください。
人類の滅亡やその先まで描けたらいいなと思っています。
ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
現実世界の我々は「ちいこ」になれないので、諦めと安心感を持って読んでいただければ幸いです。