お疲れOL×天然異世界人! 笑いと癒しの詰まったドタバタ異世界交流コメディ『賢者ならうちで寝てる』【書評】
公開日:2025/2/13

異なる世界のキャラクターが出会い、すれ違いや衝突を経て絆を深めていく過程は、意外性とユーモアの宝庫だ。現代社会の常識や不文律も、異世界人の手にかかればたちまち、新鮮な驚きや笑いの種になる。
『賢者ならうちで寝てる』(しろうーろん:原作、ななお:漫画/KADOKAWA)は、異世界の元賢者と現代女性が繰り広げる至極の異世界交流コメディだ。
主人公・莉麻は、恋人にフラれたばかりの26歳OL。「お前、仕事の愚痴しか話さねーし、一緒にいてもつまんないんだわ」という元カレの言葉にはぐうの音も出ないが、それでも納得はいかない。やけ酒を飲みベロベロに酔った状態でフラフラ歩いていた夜道で、彼女は「異世界から来た元賢者」を自称するメルラッドという男に遭遇する。
怪しさはマックスのメルラッドなのだが、酔っぱらって前後不覚になった莉麻は少しも動じない。この世界についてもっと教えてほしいというメルラッドをやすやすと受け入れ、酔った勢いのまま、彼を一人暮らしの自宅へ招き入れてしまうのだった。
本作の魅力は、異世界人・メルラッドの好奇心旺盛なキャラクターだろう。初めて目にする焼きそばパンの美味しさに感動し、缶ビールの爽快さや折りたたみ傘の便利さに感嘆する。ついでに訪問販売員に騙され、怪しげな水を大量に購入してしまうのはご愛敬か。なじみのない文化にも偏見を持たず、すべてを受け入れる大らかさと柔軟さは、傍から見ても清々しい。
単に楽観的なだけでなく、他人の気持ちに寄り添う思いやりや誠実さを併せ持つ点もメルラッドの美徳のひとつ。彼の行動や発言の一つひとつに振り回されながらもしだいに心を開いていく莉麻の姿に、読者も気がつくと温かい気持ちになっているだろう。
第2巻では、メルラッドの弟子やライバルなど、新たな異世界キャラクターが続々と登場。異世界人たちが現代社会の暮らしを楽しむユーモア溢れるシーンは必見だ。忙しない日々で心が疲れている方にこそ、彼らが繰り広げる愉快な日常はぴったり。笑いと癒しを味わってほしい。
文=ネゴト / 糸野旬