かっこかわいいジェンダーレス男子×かわいらしい外見とのギャップに苦しむ少女。自分らしい生き方とは?を問いかけるコミック『となりはふつうのニジカ(ちゃん)』
PR 公開日:2025/2/25

誰かを好きになるとは、一体どんな尊さだっただろうか。『となりはふつうのニジカ(ちゃん)』(柚原瑞香/集英社)は、そんなことを考えさせられる少女漫画だ。
描かれているのは、周囲から「かわいい」を押し付けられてきた美少女・真白あいらとジェンダーレスな生き方をする中村虹翔(にじか)の心の交流。少女漫画ならではの胸キュンや三角関係も楽しめるが、「恋愛漫画」というシンプルな言葉で片付けられないメッセージを持つ作品である。
人形のようにかわいらしい真白あいらは、整っている自分の容姿がコンプレックスだった。外見と中身のギャップを見せると周囲は勝手に幻滅。「黙っていたらかわいいのに」と言われた過去がトラウマとなり、高校では周囲が望む「女の子らしい私でいる」と密かに誓っていた。
そんなある日、中村虹翔(にじか)という美少女が突然、同居人になる。虹翔は親が海外転勤になったことから親同士が友人であるあいら宅にやってきたのだ。
虹翔は、かわいい洋服やメイクが大好き。センスのいい美少女だとあいらも見惚れていたが、ひょんなことから実は男の子であることが判明。まさかの事実を知り、あいらは動揺する。だが同時にスカートやリボンなど自分の好きなものを貫く虹翔の自由さを眩しく思いもした。
周りの反応にとらわれず生きたいように生きる虹翔。その姿は自身が憧れていたものであった。あいらは虹翔の生き方に強く惹かれていき、徐々に心の距離を縮めていくようになる。
同い年の虹翔はあいらが通う高校へ転入。それにより彼女の学園生活は一変する。クラスメイトと本音で話すようになり、これまで自分に課していた「女の子らしく」の呪いから少しずつ解放されていく。
誰かのために生きてはいない――。そう言い切り、性別にとらわれない生き方をする虹翔はかわいくて、かっこいい。そして、そんな虹翔に触発され、誰かに守ってもらう生き方をやめ、自分の居場所は自分で作ろうともがき始めるあいらの奮闘も愛おしい。
どんな自分なら周りと上手くやれるのか。どうすれば周囲の人から好きになってもらえるのか。そんな悩みは歳を重ねても尽きないものだから、本作は大人の心にも響く。
また、あいらたち以外のキャラクターが抱える様々な心の傷も染みる。「容姿が名前負けしている」と言われ傷つく女子生徒や、周囲から求められるままにかわいいキャラを演じる中性的な毒舌男子、完璧であらねばと自分を律すイケメンなど、それぞれが抱える悩みは、読み手である私たちが抱くものと変わらない。だから彼らが自分自身の心と改めて向き合う姿にはホロっとしてしまう。
完璧でありたいと頑張る人に「完璧じゃなくていい」と囁くような本作との出会いが肩の力を抜くきっかけになる人はきっと少なくないはずだ。ルッキズムが社会的な問題にもなっている今こそ、多くの人に届いてほしい作品である。
なお、あいらと虹翔の関係がどう変化していくのかも要チェックだ。あいらは、かっこかわいい虹翔に惹かれていくが、虹翔に抱く「好き」にはどんな気持ちが含まれているのかが自分でも分からずモヤモヤし……。
そんな時、虹翔が「誰とも付き合ったり恋したりはしない」という密かな誓いを持っていることを知り、ますます複雑な気持ちになってしまう。
ふたりの絆は相思相愛という言葉では語れないほど、強い。だからあいらの「好き」の先にこれからどんな未来が待っているのかワクワクする。
胸キュンだけでなく自分を変える勇気もくれる本作。ぜひ手に取ってほしい。
文=古川諭香
