“科学”と“美”で時代を動かす。理系女子が18世紀フランスを駆けるタイムスリップ奇譚!【書評】
公開日:2025/2/5

いつの時代も、女性にとって「美しさ」は永遠の命題だ。
現代に比べまだまだ技術も未発達で、知識もごく限られた富裕層のものだった時代。その一方で、現代以上に「美」を追求した時代。それこそがマリー・アントワネットらを輩出した、18世紀フランスである。
『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師~』(みやの はる:漫画、堀江宏樹(企画・原案、監修)/KADOKAWA)は、ひょんなことから18世紀フランスへタイムスリップした女性・琉花が主人公だ。
大手化粧品会社の研究職で、世界的企業との共同商品開発プロジェクトに責任者として抜擢されるほどの実力を持つ琉花。
プロジェクトの出張でフランス・パリを訪れた彼女が“時空の歪み”に巻き込まれ、気づけば18世紀のフランスへ時代を逆行していた。そんな彼女を縁あって拾ったのが、髪結師・レオナールだ。
レオナールの髪結いの仕事に同行しつつ、琉花は持ち前の科学知識と“化粧品”で18世紀フランスの人々に美を普及しながら、元の時代に帰る方法を模索する。
現代の美を追求する女性、とくに「コスメオタク」と形容される人の中には、化粧品を構成する化学成分に関する豊富な知識を持った人も非常に多い。このマンガを構成する大きな要素のひとつも、そんな化粧品にまつわる読み応え抜群の科学知識だ。
元々それらに興味のある人にとっては、非常に楽しく読める本作。
一方、そうでない人にとっても、現代の我々の身近にある化粧品がどれだけの先人の叡智の結晶であるかを改めて感じられる作品でもある。
さらに18世紀フランスの華やかで絢爛な文化・描写も満載! 加えて、主要人物・レオナールほか作品の登場人物や物語は、すべて実際の史実をもとに描かれている。そのため、激動の時代でもあった当時のヨーロッパ史が好きな人も、きっと興味深く読めるに違いない。
華やかで美しいものは、見た目だけが優れているわけではない。本作を通してそのバックボーンに触れ、物語と共に楽しんでみては。