奴隷の少女から最強魔導師に? 可愛いのに“めちゃ強”少女の、ほのぼの成り上がりファンタジー 【書評】

マンガ

PR 更新日:2025/2/3

十歳の最強魔導師天乃聖樹:原作、猫月:漫画/主婦の友社

 人は皆平等とはいうが、現実はそう甘くはない。でも、良くも悪くも自らの行ないが自分に返ってくるというのは、本当なのかもしれない。社会を作っているのはひとりひとりの人間で、見ている人はちゃんと見てくれているものだ。

十歳の最強魔導師』(天乃聖樹:原作、猫月:漫画/主婦の友社)は、鉱山奴隷として働いていた奴隷少女の、ほのぼの成り上がりファンタジー。原作は「小説家になろう」で連載され、ヒーロー文庫より発売中の小説で、現在10巻まで刊行されている。本稿では、コミカライズ版を紹介していく。

 この物語の主人公は、魔石鉱山で奴隷として働いていた十歳の少女・フェリス。幼いころから魔石の採掘を強要され、親方に殴られ蹴られ、貰える食事は僅かな古いパンのみ。それでもフェリスは、それを「しあわせ」だと思って笑顔で生きてきた。

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『十歳の最強魔導師』を試し読み

 だが、鉱山から魔石を採り尽くしてしまったことがきっかけで「用済み」と判断され、全員魔法で消し炭にされてしまう。

 そんな中、謎の力で生き延びたフェリスは、訳が分からないまま街へと向かう。そこには自分とは違う「きれいな人」がたくさんいて、そこで初めて自分が「汚い」のだと知った。

 自分はここにいてはいけない。そう思った次の瞬間、フェリスはきれいな少女が襲われたのを目撃してしまう。そしてそれをどうにか阻止しようとした彼女は、そこで力を開花させる。

 フェリスが助けた少女は、元魔術師団長を父に持つアリシア・グーテンベルト。フェリスはお礼にとグーテンベルト家に招待され、そこで魔術の才能を見出されて、アリシアとともに魔法学校へ通うことになる。そして屋敷を離れ、馬車で学校へと向かうが――。

 ずっと奴隷として過酷な仕事に従事し、辛い目にもたくさん遭ってきたフェリスだからこそ、アリシアが襲われているのを見て「きれいな人」がひどい目に遭うのはいけないと感じたのだろう。そんなフェリスの優しさに、そして自分自身に対する諦めの心に、胸が締め付けられた。優しさの塊のような子だからこそ、フェリスが笑うと見ているこちらまで嬉しくなってくる。また、アリシアとフェリスは互いに自分を助けてくれた恩人で、どちらも相手のことを大事に思い合っているのもきゅんとするポイント。このふたりが出会ってくれてよかったと心から思った。

 魔法学校へ着いてからも、元気でやんちゃな女の子テテル・ハバラスカや子どものような見た目のロッテ先生、高飛車でアリシアを敵視しているお嬢様ジャネット・ラインツリッヒ、厳格で気難しいイライザ先生など、個性的なキャラクターたちが多数登場する。

 そしてここからまた一波乱起こりつつ、またフェリス自身も一部の生徒の心に波乱を巻き起こして――!?

 周囲の人の優しさに触れ、少しずつ奴隷ではないひとりの女の子として成長していくフェリスの頑張りと笑顔を見ていると、おのずと元気が湧いてくる。フェリスとアリシアの学校生活は、魔導士としての道は、まだ始まったばかり。これからもきっと可愛く強く前へ進んでいく姿を見せてくれることだろう。今後の展開が楽しみだ。

文=月乃雫

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